回復整体基礎理論⑤(可動範囲と程度と加減)

前の記事「回復整体基礎理論④(呼吸運動理論)」


目次

身体の可動範囲について
身体の可動範囲は効果を高める上で重要

自然法則での可動範囲とは

例:ある関節の可動範囲が狭くなっていた場合

本来の関節の可動(動作)範囲を超えると、無理に筋肉や神経を引き伸ばすことにつながる。→痛みにつながる。
単純に自分の手や足を、強く引っ張ると痛みが出る。

筋肉は可動範囲を少しでも超えた状態で緊張がより緩む 。
ほんの少し、無理のない範囲で可動範囲を越したとき、拮抗筋の働きが正常になる。

その動作により連動する他の関節に動きが通じない状況で可動範囲が広がる。
その動作が自然であり、身体にとって無理がなければ安全な動作として脳が認識し、筋の緊張が解かれる。

安全な可動範囲が確定されると、その動作を繰り返し行うことで脳の身体の記憶となり無意識の動作が可能となる。

身体の可動範囲(危険な可動)を解消する

恒常性(ホメオタシス)の原理

身体を絶対支配するのは人間の脳であり、脳はこれらの外界からの微妙な変化(外界からの様々な刺激)に常に反応するように常に最善の状態を維持するために監視している。
恒常性(ホメオスタシス)は人間(生物)の重要な働き。

生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず、生体の状態が一定に保たれるという性質や状態をいう。
体温の調節なども、常に一定に保たれているのはこの恒常性のおかげである。

体温が高いときは汗をかき、血管の拡張で体温を下げる。
体温が低いときは身体をふるえさあせ、熱を発生させ体温を上げる。

回復法では、恒常性を意識において、身体の反応を考慮する。
強い刺激は恒常性が働くためもとの状態に戻ろうとする反応を示す。

そのため長時間の施術は恒常性が働き、元の不具合のある状態に戻ろうとする。
また、可動範囲を超えた危険な動作は、同じようにもとの状態(不具合のある)戻ろうと反応する。

意識がどんなに健康を願っても、無意識が悪い状態を維持するように反応してしまう。
恒常性が働くことで、健康を損ねる身体の不具合さえも、身体はその状況に適応しようと反応する。

恒常性(ホメオタシス)
生物体の体内諸器官が、外部環境(気温・湿度など)の変化や主体的条件の変化(姿勢・運動など)に応じて、統一的・合目的に体内環境(体温・血流量・血液成分など)を、ある一定範囲に保っている状態、および機能。哺乳類では、自律神経と内分泌腺が主体となって行われる。その後、精神内部のバランスについてもいうようになった。

これらの恒常性に基づいて、回復法の手法の全ては身体に最小限の負担を行うことを常に念頭に入れ行うことが大切である。
これまでの他の手技療法にあっては、これらの恒常性を無視した方法で身体の安全な可動範囲を超えて行うものがほとんどである。
回復法の手法を受けると、あまりに自然な動きの中で行われるため、ほとんどの方が寝てしまうのはこの恒常性を厳守して身体の可動範囲を超えないように実践しているからである。

程度と加減の法則

身体を支配しているのは脳幹(生命中枢)である

普通の健康な人間は、自分自身の身体は自分が一番良く知っており、自
分以上に身体の状態がわかるはずがないと思い込んでいる。

あたかも、自分の意識が全てを理解し支配しているように振舞っているのである。

しかし、実際には意識は身体の命令や支配は何も知らないし、知っていて行っているわけではない。

自分自身の意志で身体上に起こるさまざまな生理現象を完全に止めることは不可能であるし、支配しようとしても一時的な支配に限られる。
(例えば呼吸である。)

自動車を運転する時は自動車が走るメカニズムなど知らなくても運転自体は出来るのと同じである。

脳(生命中枢)は急な動作(速さ)を危険と判断する

スピードがある動作を危険と判断するのは、そのスピードのある物体等がこちらの動作より速いと、その相手から逃避することが不可能と感じるからである。

この逆にその物体等の動作が緩やかで安全だと判断すれば安心するので
ある。
身体上の様々な症状(痛み・痺れ等)もこれらの症状が原因で身体の動作が制限されてスピードが落ちている。

したがって、不調者への回復法も施術者のスピードに合わせてはならない。
どのような場合であっても、不調者の現在の症状に応じて緩やかな動作を心がけ、決して恐怖心を与えることをしてはならない。

痛みや不具合がある場合、危険を感じて身体は身構えている状態と心得ること。
こちらのスピードに恐怖心があれば、相手に触れないうちに身体を固くしてしまい、それだけで痛みや不具合を増幅させる恐れがあることを肝に銘じてもらいたい。

動作の基準は不調者の現在の動作を基準とする

逆に緩やかな動作においては安全と判断する。
(昨日まで普通の動作でも、痛みがあればその動作を基準とする)

不調者への回復法も施術者のスピードに合わせてはならない。
どのような場合であっても、不調者の現在の症状に応じて緩やかな動作を心がけ、決して恐怖心を与えることをしてはならない。

痛みや不具合がある場合、危険を感じて身体は身構えている状態と心得ること。
こちらのスピードに恐怖心があれば、相手に触れないうちに身体を緊張させる。

施術中の動作基準は相手の現在の動作が基準

相手の動作に対して不調者が危険を感じる場合判断基準は、不調者が無理なく動作できる速度。
その不調者の不調になる前の動作スピードではなく、現在の状態に対応した動作が基準。

例えその不調者が不調になる数分前の状態であっても、“現在の状態”を基準とする。
不調者の身体が自分の動作に比べて対応できないスピードで施術を行うと恐怖心から、身体を固く閉ざしてしまう。

緊張することにより、更にいっそう痛みが増してしまうこともある。
この逆に、不調者自身が対応できる安全なスピードであれば、警戒心を解き安心して身体を緩める。

特に、高齢の不調者や長年身体の不調を抱えているような場合は、施術前
の状態においても、“何をされるのか”不安な状態である。

施術者の動作一つで、恐怖を感じる場合もありうるので、相手に触れる前から物腰に注意を要する。

環境に対する基準は不調者の経験(記憶)による

脳は自然環境に常に適応しようとしている。これは人間も動物も変わりはない。
季節の変化、毎日の気温の変化、湿度や気圧の変化等、地域的な寒暖の差なども常に記憶し、自然環境に適応しようとしている。

また、適応しようとしているのは自然環境だけではなく、過去の様々な経験も同じことが言える。
例:交通事故により怪我をした経験がある場合等。

例:食べ物のレモンや梅干を想像しただけで脳は酸味を感じ、唾液が出る。
過去の記憶がその人間の様々な現象に適応しようと脳は常に状況判断している。

不調者に対し、攻撃的な動作や否定的な言動をするだけで、痛みや不具合を感じてしまう場合がある。
施術者に求められる技術は、危険を感じない、安心した対応術も大切であり、施術と同等に必要な技術である。

脳は身体の生理現象である条件反射をも抑制する

脳は危険を感じ、防護体制を発令させると本能的条件反射であっても抑制させてしまう。→僅かな刺激でも筋肉が緊張してしまう。
筋肉に対し牽引をかけると生理的な条件反射により弛緩すると説明した。

しかし、あまりに防護体制が強く緊張状態が過度になると異状な筋肉の緊張を引き起こす。
この時、軽い刺激として与えた手法であっても逆効果となる場合がある。

例:ひどいムチ打ちなどにより、脳が過剰に防護反応を発令している
場合、歩く時の風が皮膚に触れても激痛を引き起こすことがある。

脳は優しい刺激には弛緩し、逆に強い刺激は緊張する

身体は外界の刺激から常に反応する。
その刺激が危険なものか安全なものか、常に判断。

刺激が緩やかで安全な刺激であればその部位を弛緩させ受け入れる。
急な刺激、強く危険な刺激には、身を守るために筋肉を緊張させ全身に防護反応を起させる。

これは身体を保護するための身体上のシステム。
動物を飼っている方はご存知であろうが、例えば犬を可愛がる時、身体を軽く撫でてやると安心して身体を緩める。

逆に子供などが、犬の扱いを知らず無造作に足や手を引っ張ったりすれば怪訝な顔をして身体を硬くする。
動物は常に外界からの刺激に対し、危険か安全かと言うことを判断している。

施術の際に、危険と思われる刺激を与えてしまえば身を固くし、施術の効果は薄れる。
この逆に、優しい刺激であれば身体は安心して緊張を解くことになり、痛みや不具合が消失する。

痛みは身体への危険信号である

痛みは身体を通して意識に働きかけるもっとも大切な危険信号。
痛みや不快な反応があるため、その反応から逃れようとする。

結果として身を守ることが出来る大切なもの。
身体からの痛みを意識が反応することがなければ、危険を察知することが遅れ命を失ってしまう。

施術中に不調者が少しでも痛みや不具合を感じる動作は加減と程度により絶対に発生させてはならない。
回復法により不調者がほんの少しの痛みでも感じている場合はその手法は行うべきでないか、間違っているのである。

標準アプローチ法での骨格診断(代表的な症例)

①歪みが原因で発生する痛み不具合について(神経痛)

神経痛の原因(不調者の生活習慣に原因がある場合 )

身体に対し、急激な衝撃を与える。→不意の動作で骨格が変位。
恒常的に繰り返しの刺激を受ける。→身体の学習→小脳が記憶。

脳が危険と判断し過剰な防衛反応を発令することで身体は防衛的に緊張状態を身体各部に伝達。
骨格筋がその状態を繰り返し行うことで身体の記憶が強化され無意識的に反応してしまう。

身体は緊張状態を常に保ち続け骨格上の歪みに発展。

■いすに座る際足を組む。
■横座りをする。
■手枕をしてテレビを見る。
■同じ側の歯で食物を噛む。
■毎日ソファーで寝そべる。
■狭い場所で就寝する。
■背中を丸めて生活する。



身体(脳)がその状態を繰り返しの姿勢、動作により学習してその形状を記憶してしまう場合、身体に歪みが発生する。



「肩こり」、「腰痛」、「頚椎」の痛み等が発生


神経痛の原因(不調者の生活習慣に原因がある場合 )

これらの身体の学習について疲労やストレスなどにより限度を超えることにより、痛みや肩こり、痺れ。
更にはズキズキしたような痛み、激痛などに発展する。

恒常的な筋肉の緊張は疲労が発生し、老廃物がたまり、筋肉痛、軟部組織の潰れとなる場合がある。(筋肉痛、軟部組織の潰れにあっては、応用アプローチ法となる。)
この場合、標準APP法で解消する。

もちろん、正確な診断に基づき手法に関しても、呼吸法、関節の可動範囲を正しく理解し精度を高める必要がある。
疲労が原因でない身体の歪みは、場合によっては一度の標準APP法のみで解消する。

ただし、身体の過度な学習によるものは繰り返しの施術が必要となる。

疲労が原因で神経痛へ

身体の疲労が続くことにより、肝臓が老廃物の処理について最大限機能することにより、他の能力が低下し、新陳代謝が遅れる。
そして身体各所の細胞の組織が古くなり身体各所の機能が低下する。

この状態が椎間板の変性となり、特定の組織に留まらず身体全体に及ぶ。
最終的には一番体重のかかる最も弱い部分の負担が大きくなり圧迫されて潰れるようになる。

これが特に椎間板という組織に負担が大きくなる原因である。
これらの原因で椎間孔から出ている神経が圧迫により挟まれ、その神経につながる身体各部に神経痛になり症状が発生する。

これらに①の身体の歪みが相乗され痛みや痺れといった症状が複合する場合もある。
この場合、標準APP法を行うことで症状はかなり軽減する。

身体各所の歪みを正し、正常な身体機能を取り戻すことで疲労が解消されていく。
積年の疲労は1日~2日では解消しない。

そのため、本人の現時点での体力の範囲に合わせた生活習慣の改善がもっとも大切となる。
疲労を解消しながら行うため、標準APP法の施術もある程度の回数が必要となる場合がある。

②睡眠不足や積年の疲労の蓄積等が原因の場合

(椎間板の劣化と収縮)

長年の疲労の蓄積や、長時間における過労などによる疲労の蓄積。
何日間にも及ぶ睡眠不足などが原因。

椎間板組織が変形し組織が弾力性を失い自重に耐えかねて、椎間板細胞組織が圧迫を受け耐えきれなくなり、潰れ神経を圧迫する。
椎間孔で①と同等の現象が発生することになる。

1日の内、時間経過により症状が変化する。


■ 朝目覚めると痛むが、時間経過により楽になってくる。
■ 朝は痛くないが、時間経過により痛みが出てくる。
■ 日中痛みが出る。
■ 夜間に痛くなる。



身体を休ませると痛みが楽。
同じ姿勢を長時間続けると椎間板組織が潰れ神経を圧迫し症状が発生する。
同じ姿勢を保つより、他の姿勢をとったり、歩いたりすると症状が楽になる。
歩いたり、他の姿勢をとることで同じ部位に対し体重が掛かりにくくなる。
これらは神経の圧迫が少なくなるため。



椎間板の劣化と収縮

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