普段何気なく生活している中で人間はどのように身体を動かしているのか

■ 脳の構造と働き

回復整体の実技を始める前に、普段何気なく生活している中で人間はどのように身体を動かしているのか、脳の構造から簡単に解説してみたいと思います。
人間の脳は大別しますと大脳と小脳、脳幹という3つに分けられます。

この3つの内、人間が様々な思考をしたり、感じたり、言葉を発したり、記憶したりと、大きな役割を持つのが大脳です。

他の2つの脳も重要ですが、人間が他の動物と決定的に違うのが大脳で、人間の知能が他の動物より優れているのは大脳が大きく発達しているからなのです。

大脳には大脳新皮質、大脳辺縁系、大脳基底核があり、それぞれに役割があります。

大脳新皮質は人間が思考する際の中枢になっています。

大脳辺縁系は旧名大脳旧皮質とも呼ばれ、食欲、睡眠欲、性欲等、人間が生きていく上で、種を保存する様々な機能をコントロールしている部位です。
喜怒哀楽などの情動もこの部位に関係し、人間の「心」の基本的な場になっているといわれています。

大脳基底核は、脳と脳幹をつないでいる神経の総称のことをいいます。
大脳基底核の役目は様々であり、小脳と連携して運動の調整をしたり、学習など多彩な役割をしています。

小脳の役割は運動機能の調整です。無意識に行われる姿勢の保持も小脳の働きです。

例えば立ったり座ったりという動作をその都度考えずに自動的に行えるのは、小脳の働きによってバランスが保たれているからです。

また、指先の細かな作業を行えるのも小脳がしっかりと働いているおかげです。

 

回復整体では、この小脳の働きを重視しています。

脳科学の最近の研究では「身体の記憶」、つまり昔からスポーツや仕事などでよく言われている「考えるな、身体で覚えるのだ」という言葉は、大脳で意識的に行っていた身体動作を小脳が記憶することによって、その後無意識に行えるようになることを意味していると判明してきました。

人間がイメージしただけで考えずに様々な身体動作を実行できるのは、全てこの小脳が関与しているからなのです。

例えば、「自動車の運転をする」という動作に関して説明します。

自動車の運転は、人間が基本的に生まれながらに身に付けている動作ではありません。

その証拠に、生まれながらに自動車の運転技能を持っている人間はいません。

自動車学校に通い、自動車教習所の教官にあれこれ指導を受け、失敗しながら身体で覚えていくしかありません。

「自動車を運転する」という動作は、最初は自動車教習所で担当の教官に指導されながら意識的に行います。

最初の運転はとてもぎこちなく行っていると思います。

 

しかし繰り返し自動車を運転していくうちに、意識的に考えなくても運転ができるようになります。

これは意識的に行っていた動作を小脳が記憶して、意識せずに行えるようになったからなのです。

自動車の運転を一度覚えてしまえば、何時でも、自動車に乗れば考えることなく運転することができます。

これらの身体のシステムは、小脳が身体動作を記憶しているからこそできることなのです。

大脳は意識的に行っている働きを担うのに対し、小脳は身体の様々な活動を無意識に担っているから、私たちはイメージしただけで思うように身体を動かすことができるのです。

 

大脳が繰り返し思考していることを、考えなくても無意識にできるように、小脳は大脳が行っている思考をコピーして記憶するということです。

自動車の運転の例のように、日常的に行っている繰り返しの動作は、何も考えなくても行えるように小脳がその動作を記憶しているのです。

これらの脳のシステムは、大脳がいちいち考えて動作をしなくても、小脳にまかせてすぐに結論を出せるようにしているからです。

私たちは日常的に、とっさの動作をしなくてはならないことが多々あります。

そのような際、すぐに判断して身体を動かすことができるのは、大脳が思考していることを小脳が記憶してがあるからなのです。

次に脳幹の役割と簡単な回復整体技法の活用法を交えて説明します。

回復整体では、無意識に働いている脳幹への刺激を具体的な技法として行います。

例えば、自律神経には交感神経系と副交感神経系とがあります。

脳幹は外界から受けるあらゆる刺激に対し、生命を維持するために常に防御態勢をとっています。

防御反応は、身体の外からのものであっても、身体内部のことであっても、その刺激に対して即必要な反応をします。

回復整体では、この反応を利用して施術を行います。

 

ひとつ例を挙げてみます。

回復整体では呼吸を利用することで骨格筋を操作して、脳幹の反応を引き出す方法があります。

呼吸には呼気と吸気があります。 要するに息を吐く行為と吸う行為です。

息を吐く行為(呼気)では自律神経のうち副交感神経系が働きます。

息を吸う行為(吸気)では交感神経系が働きます。

この生理反応を応用すると、骨格筋が異常に緊張している部位に関しては、息を吐く(呼気)タイミングにあわせて骨格筋を操作すると緊張が解消されます。

逆に骨格筋を緊張させる必要がある時には、息を吸う(吸気)タイミングで骨格筋を操作すると、緩んだ筋肉が緊張します。

これら脳幹の働きを応用して、無意識的に骨格における無用な緊張や弛緩状態を解消することも可能になっています。

これ以外にも、身体において無意識に行われる様々な反応を利用して骨格を正常な状態にするように働きかけていく方法が回復整体です。
(余談ですが、熱いものに触れたときに手を引っ込めたり、転びそうになったときに無意識に手のひらを前に出すなどの無条件反射も利用します。

逆に無意識に行われている間違った姿勢や動作においては、条件反射を利用するために繰り返しの動作を意識的に行うなどの方法をとっています。)

 

脳幹は大きく分けて、肝脳、中脳、橋、延髄の4つに分類されています。
それぞれ役割は違いますが生きていく上で必要最低限の機能を管理している脳です。

脳幹の働きは以下の2つに分類されます。

人間の思考や行動は大脳が活動していることから成り立ちますが、脳幹はこれらの大脳の活動を抑制する役割を担っています。

回復整体では、間違った姿勢や動作(痛みや不具合の引き起こす姿勢や動作)を、大脳の正しい思考、正しい行動によって意識的に行います。

これらの取り組みができるのも脳幹が大脳に活動させているからです。

 

意識の制御も大切なことですが、人間が生きていく上で最も重要な役割は、生命維持機能です。

大脳や小脳が部分的破損をしても関係する部位について機能障害が発生する程度ですが、人間に限らず動物は脳幹が破損すると生きていけなくなりなります。

脳幹は生命維持に関係する重大な役割がありますので、呼吸や心臓を動かすこと、自律神経の調整、ホルモン分泌など、生きていく上で必要不可欠な機能が影響されます。

 

したがって脳幹の破損は、生命活動そのものが危険にさらされるということになります。

人間らしく生きるためには大脳や小脳の働きは重要ですが、脳幹は私たちがその働きを何も意識しなくても絶え間なく生命の維持について働いている生命の自動制御装置といえるでしょう。
<補足事項①>

脳は、生命に危険が発生した場合、直ぐに対応できるように常に活動しています。

例えば、あとから危険でないと判明しても、何か不明な物体が飛んでくれば、反射的にその物体からよけようと全身の筋肉が緊張し、瞬時にその物体をよけるように活動を起こします。

考えてから物体をよけようとしても怪我をしてしまうため、脳は自動的にこれらの伝達を受けると意識の判断を待たずに行うように指令しています。

<補足事項②>

随意運動、不随意運動、呼吸について。

随意運動とは、意識的に行われる運動をいいます。

不随意運動とは、無意識のうちに行う運動のことです。 心臓の運動、消化器官の運動が該当します。

回復整体は、人間の身体の活動における随意運動と不随意運動の両方を利用して行う方法です。

これら二つの運動の両方を行うことができる唯一の行為とは、「呼吸」です。

随意運動、不随意運動、およびその両方を行うことができる呼吸運動とを適切に組み合わせて意図的に行うことで、様々な骨格上の不具合を改善することが可能となるのです。


基本7メソッド<目次>

回復整体基本メソッド解説(はじめに)

普段何気なく生活している中で人間はどのように身体を動かしているのか

回復整体の理論について

基本7メソッド骨格検査・診断編

直立姿勢位歪み診断法<姿見検査法>

直立姿勢位歪み診断法<アーム検査法>

正座姿勢位骨格診断法<正座検査法>

直立姿勢位歪み診断法<腸骨検査法>

イス姿勢位骨格歪み診断法<イス腰掛検査法>

基本7メソッド実技編

1.イス姿勢位回復法<イス足組法(骨盤前後の調整法)>

4.伏臥位腰背部軽擦法<広背筋を緩め筋肉痛解消>

5.イス前屈微圧法<座位で腰背部の緊張を解消する>

6.原位足首回転法<下半身・骨盤の全体調整>

7.上腕伸ばし姿勢位回復法<上半身の全体調整>


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