講義資料
程度と加減についての講義を文章起こししました。
誤字脱字、言い回し等不明瞭の部分があることをご了承ください。
以前、痛みを取るということで呼吸が大事ですよ、という話をしました。
そして可動域を壊さないという話もしました。
そのために大事なことがまだあります。
「程度と加減」です。
詳しく説明します。
施術で考えてみます。
施術の際に患者さんに同じ刺激を加えるにしても、速くやると怖いと感じることがあります。
例えば正面からプロ野球で使う硬いボールが凄いスピードで飛んで来たら怖いと感じるでしょう?
逆にボールがゴムか何かでできていてがゆっくり飛んできたら、それほど怖いと感じないと思います。
この例えと同じです。
身体に刺激を加えるときに、ゆっくりとした動作で加えると、相手が安心するという法則があります。
程度に関しても、例えば痛みがきつい人ほど、いきなり思い切った動作というのは怖のです。
皆さんも経験がると思いますが、どこか痛い時、捻挫か何かで足首が酷く腫れてしまって少しでも患部に触れれば痛くて悲鳴を上げてしまうような場合があれば思い出してみてください。
そんなとき、周囲の人間の動きに敏感になると思います。
自分の痛みを知っている大人なら気を付けて接してくれますが、全然理解できない例えば2~3歳の自分の子供がいきなり抱きついてきたら?
怖いですよね?
健康な時なら、子供の動きなんて緩慢ですから怖がったりしません。
でも、健康を害している時、普段なんともないと思っている相手の動きが怖いのです。
それは現在の自分の状況と速度に関係しているのですね。
ようするに今の自分の恒常性が健康時よりかなり低くなっているという事です。
ですから、施術は相手の環境に合わせて「ゆっくり」やってあげたほうが、相手が安心して弛緩するということがあります。
それは脳の防衛反応が働くからです。
防衛反応とは恒常性維持機能(ホメオスタシス)のことです。
以前お話ししたように、全部自分を中心にして、その刺激が敵か味方か、というように脳は判断するのです。
それを一瞬のうちに受け入れるか受け入れないかで生命が失われるかもしれないからです。
命の危険があれば悠長なことを言っていられないからです。
後から意識が「なんだ全然危険じゃない」と思っても、とりあえず刺激に対し「全て危険」と判断します。
回復整体の技法を行う際もこれと全く同じです。
重症な人ほど僅かな刺激で、優しくゆっくり行います。
びっくりさせないように限りなくやさしく、恐怖を与える速度で行わない。
動作が緩慢な加齢者も同じです。
若い方でも病気や怪我などがあって、動作が緩慢になっていればこれも同じです。
普段のその人間の環境ではなくて、今現在の環境に合わせるのです。
とにかく施術は「ゆっくり」行うことを前提にします。
相手の環境に対してその刺激が適切な物であれば、「この刺激は安心できるぞ」
ということで受け入れてくると、例えば筋肉が硬くなっていれば弛緩していきます。
もっと別な言葉で言うと、刺激が安全か安全であるか、そうでないかを判断して安心安全であれば身体が緩んでいくのです。
安全だと思えば受け入れるし、安全でないと判断すればそうじゃない。
安全だと思えれば自律神経のうちの副交感神経が働き筋肉が緩みます。
危険だと思えば自律神経のうちの交感神経が働き筋肉が緊張します。
付け加えておきますがここで言う刺激というのは、決して触るだけではないです。
人間の五感から入ってくる情報全てに言えることです。
良い匂いを嗅いだだけで緩むことがあるでしょう?
逆の場合もありますね。
きれいな花を見ただけで和むでしょう?
このように人間の五感から入ってくる情報から安心できると判断できえれば副交感神経が働いて筋肉が緩むのです。
逆に耳から入ってくる情報が、やかましい音だったら身構えて筋肉は緊張します。
視覚だと例えば歯医者さんに行くと痛いことをされるイメージが大きいと、歯医者さんを見ただけでもそうですし、思い出しただけでも身体がこわばってくるかもしれません。
身体に直接刺激を与えなくても、そういったことが起きてくるんです。
人間は外的要因ばかりではなく、内的要因を含めその環境によってこういったことを頻繁に行っています。
これは無意識にやっています。
無意識にやって今度は習慣にしてしまいます。
脳が記憶しますから、そうすると習慣となります。
野球なんかそうですね。
バッターボックスに立って、ピッチャーが投げる球を最初は速いと思っても、毎日のように野球をやっている方はそんなに速いとは感じなくなります。
慣れるとはそういう事です。
良い意味で使えばそうなのです。
しかし回復整体の理論から考えると、健康回復(治療)すためにどうしたら良いかというと、いつも強い刺激ばかり与えるのは駄目なのです。
強い刺激が効くと思って何回もやっても駄目なのです。
身体というのは覚えてしまうものですから、その刺激が当り前となってしまう。
するといずれ同じ刺激には反応しなくなってしまうのです。
匂いでもそうでしょう?
臭い匂いばかり嗅いでいると、それが当り前になって臭く感じないでしょう?
良い料理ばかり食べているとそれが当り前になって、美味しいと感じなくなってしまいます。
だからもし施術でそれを生かそうとするならば、ほんのちょっとの刺激をさっと一瞬入れてあげたほうが効果がある場合があります。
さらに翌日また同じようにやってあげると、記憶しますからもっと良い状態が作れるということが起きてきます。
脳というのはどのように働くかというと、先ほど説明したように優しい刺激に対しては弛緩するように元々できています。
強い刺激に対しては身構えるようになっているんです。最初は。
でもそれが慣れていく。
それをうまく使って施術をするのです。
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