日本回復整体総合学院<ある日の講義>

目次

(以下は元カイロプラクターの下条講師が学院で講義した際の内容をまとめた記事です。)

私が回復整体(リセット整体)と出会うまで

私が療術の世界に入り、すでに22年になりました。はじめにカイロプラクティックの学校に入り、カイロのいろいろな手法を勉強しながら、ある療法がいいと聞けばその療法を勉強し、また別の療法がいいと聞けばその療法を勉強し、いろいろな療法を学んできました。それは、自分の中でどうしても腑に落ちない点があったためです。

今まで学んだ療法はどれも素晴らしいもので、学ぶことで治療効果は上がりました。しかし、私の悩みが解決することはありませんでした。

例えば、ある療法では「頭蓋骨に万病の元があり、正しい位置に戻すことで痛みが消えます。」「仙骨のずれが原因で、仙骨の傾きを直せば痛みはとれます。」「股関節に原因があり、股関節の方向を正しくすれば、病気も症状も取れてきます。」など、症状の原因を一つに絞る傾向があります。どの療法も一理あり、効果的なのですが、突き詰めていくとやはり劇的に良くなる人がいる一方で、いま一つ改善してこない人もいるのです。また前回は良くなったのに今回は良くならないというようなケースもありました。

つまり「再現性がない」ということです。そのため施術自体に自信が持てず、良くならなかった理由すらわからず、路頭に迷ってしまうのです。

私はいわゆるセミナー難民となり、何十万もかけて話題のセミナーに通い、納得できずまた他のセミナーに通うということを繰り返しました。数々の手法を渡り歩き、追いかければ追いかけるほどわからなくなっていき、自分に自信が持てなくなっていきました。

 

回復整体は【仮説と検証】がたくさんある

そんな中回復整体に出会ったことで、今までの悩みが解決し、私は全てに納得することができました。

私はさまざまな手法を知った後、縁あってこの回復整体に出会いました。他の療術の経験がなく、最初からこの療法に入ってきた方たちはピンとこないかもしれませんが、「仮説と検証がたくさんある」という点がこの回復整体の素晴らしい点の一つです。

例えば、骨格や背骨のずれが原因で痛みが出ることは周知の事実であり、病院でもカイロプラクティックなどでもその点を考慮に入れ、対処するのは同じですが、この療法ではそれでも痛みに変化がなく、ずれも残ってしまっている場合、今度は筋肉の緊張ではないか、逆に緩みすぎているのではないかという仮説がまた別に立てられるということです。すぐにその場で「ではこの手法をやってみましょう。」と、その仮説をまた短時間で検証することができます。

 

首の手法、腰の手法、足の手法などいろいろな手法がありますが、それでも症状が改善しないときには、今度は脳による誤作動が起こっているのではないかと問診だけで絞った原因だけでなく、実際に施術をしながら、仮説と検証を繰り返すことができるので、原因を絞り込むことができるということです。

また私が昔やっていたカイロプラクティックなどでは、「動作時の痛み」を取ることはたいへん難しいことでした。例えば静止時の腰痛などは、右にずれている骨を左に矯正したり、骨盤のねじれを取ったりすることで改善させていましたが、「階段を上がるときの膝の痛み」や「曲げて起こすときの腰痛」など、骨などを正しい位置に矯正しても痛みがとれず、改善しないケースがありました。今では、その原因が動かすときにだけ関節がずれたり、うまく動かなかったりすることだと分かっていますが、当時はそういう考え方を知りませんでした。

 

今では回復整体を学んだことで、動かすと痛いのならば、痛みに合わせて動かしながら、関節の向きを変えてあげたり、関節が開くようにしてあげたりすることで、その場で痛みを改善することができるようになりました。

「仮説と検証」を繰り返すことによって、どんな痛みでも原因を絞りこむことができるのです。

その場で効果が出ますから施術に自信が持てますし、自信を持った対応ができます。「では、明日続きをやりましょう。」「後何回くらいで改善していきますよ。」と、自信を持って相手に伝えることができますので、それに伴い患者さんとの信頼も生まれます。

 

そして、重症者にも対応できるようになりました。

昔はぎっくり腰で担がれてくるような方はお断りしていました。

強く押すことも、身体を捻ることもできないので、来てもらってもできることがないのです。

横にすらなれません。

そういう方たちには、「今炎症がひどいので、もう少しおうちで冷やしたりして、炎症がとれて一人で歩けるようになってから、ぜひお越しになってください。そうすれば骨の位置を正しい位置に戻せます。」と対応していましたけれども、今では担がれてくるような方も「どうぞいらしてください。」と自信を持って言うことができます。

その場で激痛が10から0にならなかったとしても劇的に変化させ、お一人で歩いて帰ったり、背骨を伸ばして帰ったりすることができるようになります。

そうなると毎日仕事も楽しく、さらにいい結果が多くでるようになりました。

 

回復整体に出会って~脳へのアプローチ~

それまで学んできた療法と比べ、この回復整体の最も優れている点は「脳へのアプローチ」だと私は考えています。

脳の脳幹という部分にアプローチすることにより、一瞬で緊張を解くことができる。

これを皆さんにも大いに活用していただき、是非今後の施術に役立てていただきたいと思います。

学院の教材『回復の業』の中に、「回復整体の理論(脳の反応を利用する)」というところがあります。

私がこれをどのように解釈し、実際に現場でどのように使っているのかを具体的に説明していきましょう。

まずは回復整体の理論的な部分について図1を使い、説明していきます。

「脳の反応を利用した無痛整体」とありますが、右脳と左脳の間には原始脳と言われる脳幹という部分があり、姿勢反射をつかさどっています。

そこにアプローチしながら筋肉の緊張を取り除いていきます。

その際、手法だけでなく、表情や言葉がけ、手の触れるタイミングや離すタイミングなど「五感を利用」しながら、「この刺激は安全なのですよ。緊張を解いていいのですよ。」ということを脳にわからせていきます。

 

ですから、他の療法に比べ、この療法の特徴は相手をいかに安心させるかに尽きます。

もちろん、骨盤や背骨の歪みがあれば痛みが発生しますが、その痛みをとるためにこのようなアプローチでまず全身の緊張を解いていきます。

その点を主たる目的として施術していくことになります。

まず触れ方や呼吸ですが、息を吸っているとき、吐いているとき、どのタイミングで触れ、どのタイミングで離すか、そしてどのくらいの強さで握るかが重要となります。

 

次に牽引ですが、骨盤の矯正やねじれを取っていく際に足を牽引したり、骨盤に圧を加えたりしますが、その強さや角度によって、相手が痛い、あるいはつらいと感じた時点で効果は半減してしまいます。

いくら正しい方向に引っ張っても、圧をぐっと正しい方向に加えたとしても、相手に「怖い」「痛い」という感情がある限り、上手に緩んでいかないということです。

そして言動(伝達)です。一般の療術家の先生は意外と見落としてしまうか、施術には関係ないことだと考えていますが、言動(伝達)はとても大切です。

言葉遣いや表情が不調者に大きな影響を与えますので、ここをうまく利用していくことで施術効果は格段に上がります。

 

最後に「希望を見せる」と書いてありますが、いかに身体の変化を上手に伝え、ここの施術で治るという希望を相手に持ってもらえるかが重要です。

例えば何年も苦しんでいた痛みを10としたとき、1回の施術でそれが8になったとします。

それを2減ったと一緒に喜べるのか、8残ったと見るのかで、今後の治療のスピードが変わってきます。

何年も続いた痛みが「たった一回でこれだけ減ったんですよ。

続けていけばよくなりますよ。」ということをその方にどれだけうまく伝え、納得していただけるか。

それが難しいところであり、とても大事なところでもあるのです。

 

脳への反応を利用することで、重症者に対しても効果を上げることができます。

先日私の施術所にいらっしゃった不調者の方を例にあげ、説明しましょう。

その方は膝の関節がずれてしまい、かなりの炎症があるようで、少しでも動かそうとすると痛みが出ていました。

APP(標準アプローチ法)という骨盤や背骨をそろえたりする手法すらかけられず、「ポンプ法」という膝を曲げる手法も全くできませんでした。

では何をしたのかというと、私たちの手法の中には、優しく触るだけの「微圧」や軽く触れて擦っていく「軽擦法」がありますので、それらの手法をうまく利用し、安心させ、脳の緊張をとっていきました。

不思議なことにこれにより痛みが改善し、その場で少し膝を曲げることができたり、動かすことができたりするようになります。

その改善を双方が感じることができるようになるのです。

それを繰り返し行っていけば、やがて膝もしっかり曲がるようになります。

 

もちろん、それは手法による効果だけではありません。

初めてお見えになったときは、2週間に1回膝に注射をうっており、グレープフルーツのような大きな膝をしていましたが、それが一回の手法で少し改善し、さらに「今後続けていけば直るのですよ。」「もっと楽に歩けるようになりますよ。」ということを伝えたので、たいへん明るい表情をして帰っていかれました。

いかにその人の緊張をといてあげられるかということを考えながら、いろいろな言葉がけをし、自分が良くなる過程を見せながら変化を伝えていったことが、その一回の施術の効果として表れたのです。

実際の施術を交えて

 

では、今まで述べたことを実際現場でどの様に利用しているか説明します。

ここにはそれほど重症な方はいませんので、わかりやすいことから始めましょう。

筋肉に対しアプローチする手法には、「横牽引」「縦牽引」「微圧」などがあります。

 

【施術例1 首の不調】

 

首を横に曲げたときに、曲げた方向の反対側がつれたり、痛みがあったりする場合があります。

 

Aさん:左に首を曲げたときに、右首筋に痛みが走ります。

下條:左側に曲げた時に、右側がつっぱるのですね。

反対側はどうですか?

Aさん:こちらは、ありません。

 

右側だけに痛みやつれが出ています。

これは、骨盤が歪み、それにより首につれが出ていると考えられます。

 

しかし、すでに何年間もその状態で凝り固まってしまっていた場合、標準アプローチ法でこれを緩めたとしてもつれが残ってしまうことがあります。

それをどう変化させていくかを実際に見ていきましょう。

まず、立っている時に骨格的な歪みがどのくらいあるか姿勢を見ます。

後ろから見て、左肩が少し下がり、若干左に首を曲げているように見えますね。

 

アーム検査をしましょう。

下條:肩に指先をあててください。(写真1参照)

Aさん:はい。

下條:これはそれほど差がないようですね。手を下ろしてください。

鎖骨の位置、骨盤の位置ともに、立っているときはそれほど大きな歪みはありません。

では先に、少し体幹部や身体の歪み、骨盤の歪みを簡単に取ってみて、それで変化が出るか出ないかでどこの影響が出ているのか調べてみましょう。

写真2

下條:仰向けに寝てみてください。(写真2参照)

頭上から見ますと、寝ていてもやはり首が少し左に傾いていますね。

右足のほうが外に開いています。

これも身体のねじれです。

股関節や骨盤の辺りにねじれが出ていているのですね。

これを取ってみましょう。

挙上検査(バンザイ検査)をします。

下條:力を抜いてすっとバンザイしてください。

真ん中に合わせたときに、右手がずいぶん長いですね。(写真3参照)

両手がすっと上がってきて、無理なく静止した位置で中心に合わせたときに、爪の長さほど、2センチ近く右手が長いですね。

下條:では、下ろします。

ASIS検査をします。(写真4参照)

先ほど立っているときはそれほど歪みがありませんでしたが、寝ると右のASIS(骨盤の前面の突起部分)の位置が高くなります。

下條:膝を立ててください。

かかと、つま先をあわせ、膝を保持します。(写真5参照)

右のASISが高くなっている影響もあると思いますが、右膝が上がっています。

右膝が奥に入り、左膝が指一本分くらい手前にきています。

股関節の位置が、右が上方、左が下方になっていると考えられますが、骨盤のねじれも影響しているようですね。

膝を呼吸に合わせて曲げ、持ち上げていきます。(写真6参照)

若干左が高いです。

呼吸を見ながらゆっくりと下ろします。

下條:左側を軸に、うつ伏せになってください。

肩甲骨と背骨の歪みを見ます。


肩甲骨の位置はそれほど差がないですが、
左側の背中が膨隆しています。(写真7参照)
張りが強く、Cの字に曲がっています。

ここから脳の反応を利用して、緊張を入れていきます。(写真8参照)
緊張を解くだけではなく、緊張を入れることによって、
歪みを取ることもできます。

背骨に沿って、3点に優しく触れます。
これで今、まっすぐになりましたね。

次に右の骨盤の位置を少し下げたいので、右足の牽引をしていきます。(写真9参照)
これで股関節の向きと骨盤の位置を調整します。

これも全部呼吸を見ながら、
相手に負担のかからない呼吸とタイミングで持ち上げていきます。

下條:これは痛くないですか?
Aさん:はい、痛くないです。
下條:手で持たれている部分や足の付け根も痛くないですか?
Aさん:はい、大丈夫です。

しっかりと呼吸を見て離します。
触るタイミングと離すタイミングをきっちり見るようにしてください。

それにより相手に負担をかけずに、脳をより安心させ、確実に緩ませ、結果を出すことができます。

忙しくなってくると、どうしても雑になりやすい点ですが、呼吸やタイミングをきっちり見ておくことが必要です。

手を離すときまで、不調者さんの脳は比較的緊張状態にあります。

手を離した時に初めて、「あ、今の刺激は安心だったな。」というふうに
脳が理解することで、すっと緩んでくるのです。


下條:はい、では右を軸に仰向けになってください。(写真10 参照)
右足の角度がよくなりましたね。
先ほどは右足がずいぶん床に近かったのですけれど、右足が起きてきましたね。
身体の緊張が解けて、バランスが整ってきました。
再びASIS 検査をします。
下條:このASIS の位置が下がってきました。
それだけ骨盤がそろってきたということですね。

 


下條:膝を曲げてください。(写真11 参照)
つま先を揃えます。
脛骨粗面(けいこつそめん)の位置がそろってきましたね。
右の骨盤が起きることによって、膝の位置がそろってきました。
これだけ骨盤のバランスが整ってきたということです。


膝曲げ検査をします。(写真12 参照)
この膝の位置も、先ほどは左側が高くなっていましたが、そろってきました。
膝を下ろしますが、着地するときも気をつけてください。
ゆっくりと下ろしてください。
これで骨盤部の歪みをとることができました。
下條:左を軸にしてうつ伏せになってから、起きてください。
これで、首が改善する場合もありますし、張りなどが少し残る場合もあります。
その確認をしてみましょう。
下條:足踏みを何回かしてください。
首の左右の曲げ伸ばしはどうでしょう。

先ほどの痛みや張りを10 とすると今はどのくらいですか。
A さん:(首を左右に曲げながら)さっき張りを感じた角度がこのくらいだったと思ったのですが、
今はないです。
下條:逆側はどうですか。
A さん:さっきはこれくらいの角度で張りがありましたが、今はないです。
下條:深く曲げるとどうですか。先ほどはこれほど右側に首が曲がらなかったですね。
A さん:深く曲げても、皮膚が伸びているというつっぱりしかありません。
下條:逆側も張りはないですか。
A さん:はい、こっちも皮膚が伸びているというつっぱりしかないです。
下條:なるほど。わかりました。
これだけ効果が出ていますので、こういう場合はこれで帰すことが多いです。
首の張りを取る手法もありますので、さらにそれをやって帰っていただくこともあります。
今は全ての張りがとれてしまいましたが、残るケースもあります。


今回張りが取れたことはとてもいいことなのですが、本日の講義(痛みが残るケースの施術)とは趣旨
がずれますので、B さんの場合どうなるかやってみましょう。
下條:こちらに立ってください。
B さんは首が左に傾く癖がありますね。
左側に首を曲げると右側が突っ張るのですね。
逆側はどうですか。
B さん:こちらは大丈夫です。
一つ覚えておいていただきたいことがあります。


指をそれほど痛くないところまでそらしてみてください。(写真15 参照)
今は痛くなくても、数十分続けると、かなり痛くなってきます。
これは、伸ばされ続ける筋肉は、伸ばされまいとして緊張が入ってくるからです。
首が左に傾く癖を持っている人というのは、首の右側の筋が張ってきます。
ではどうしたらいいのかというと、正しい位置まで戻し、開放してあげればいいのです。

 

無意識の脳が、釣竿に獲物がかかったときと同じように右側の筋をぐっと緊張させ、テンションを変え
ていますので、その緊張を開放してあげればいいのです。
私が昔やっていたカイロプラクティックであれば、右側に出ている骨を矯正したり、位置を変えてあげたりするのですが、骨の位置がよくなってもこういう筋肉の強い緊張が残っていると、またそれに引っ
張られて、左側に曲がるバランスに戻ってきてしまいます。
こういうバランスの原因は、首ではなくもっと下にある場合が多いのです。
骨盤や股関節、足首に原因があることもあります。
その辺が骨盤の歪みがとれることによって、どのくらい変化するか、あるいは残るのか、見ていきましょう。


下條:仰向けになってください。
腕の位置はその状態が楽なのですね。
自然な感じですね。
少し右手と左手の角度が違っています。
身体の使い方の癖がでてきますので、こういう点をしっかり見ておいてください。
施術のポイントになってきます。
足の開きはそれほど変わらないようですが、少し右側が外に向いています。
また先ほど立っていたときもそうでしたが、身体が左に曲がっています。
こちらが右に開いていました。
バンザイ検査をします。


下條:バンザイをしてください。(写真17 参照)
それほど差はないですね。
右手のほうが少しだけ長いですが、それほど大きなずれはありません。
今度は骨盤のずれをASIS 検査で見ていきましょうか。
ASIS は右が上に上がっています。

膝たて検査をします。


下條:膝を立ててください。(写真18 参照)
左膝が少し手前です。
左膝が少し上がっていますね。
呼吸を見ながら負担がかからないように両膝を持ち上げてみましょう。
(写真18 参照)
左膝が少し高くなっていますね。すごく微妙です。


下條:左を軸にして、うつ伏せになってください。(写真19 参照)
うつ伏せになると、足が左側に来てしまいますね。
左側に流れてしまっています。


(肩甲骨をなぞりながら)肩甲骨は右側が下がっています。(写真20 参照)
(背骨をなぞりながら)背骨は左側に曲がり、足元から見るとC の字の逆になっています。
膝は左膝が高くなっていますね。
うつ伏せの状態で見ても、右足が短くなっていますね。
これで長い側の足を牽引してそろえる場合もあるのですが、今回は膝の位置が低かった右足を牽引し、骨盤や股関節の調整をしていきましょう。

右足を牽引します。(写真21 参照)
下條:右足を持ち上げられて痛くないですか。
握っているところも大丈夫ですか。
これで、骨盤の可動域の限界点まですっとストレッチしていく方向でもってきました。
ここ、最後が大事です。
吸気、息を吸っているときに離しましょう。
これで背面瞬間回復法をやります。
(正中線に沿って数箇所軽く圧をかけることにより、一瞬にして脊柱の歪みを回復させる手法)
下條:いいですよ。

右を軸に仰向けになってください。
ずいぶんバランスがよくなりました。
先ほどより腕の位置、身体全体の位置が良くなりました。

 


ASIS 検査、膝曲げ検査をします。
下條:膝を曲げてください。
かかとをそろえます。
これも揃ってきました。
先ほどは右膝が奥に入っていましたね。これもいいですね。
骨盤の位置、股関節の位置はそろってきました。
下條:左からうつ伏せになって起きましょう。そして足踏みしてください。
まっすぐに気をつけしてください。
まだ少し左に傾いていますね。


こういう癖が何年も続いている方は、一回で取れないことも当然あります。
このときに大事なのは、症状がどうなっているか、
骨盤の歪みがどうなっているかを確認することです。
繰り返し施術をすればとれてきますが、骨盤の歪みが取れ、下がそろったときにどういう筋肉の伸ばさ
れ具合など、どういう変化が出るか確認してください。
下條:右と左に曲げてみて張りを見てください。
左側に曲げたとき、右側に張りがありましたが、その張りが10 あったとするとどのくらい取れ
ましたか?
B さん:7、8 くらいは取れましたね。
下條:8 くらい取れ、2 残っているということですね。
これもずいぶん張りが取れてしまったケースですが、今日はこの2 を追いかけてみましょう。
先ほどもいいましたが、長年の緊張で常にテンションがかかっている状態になり、緊張を無意識
のうちに自ら作っているのです。

下條:首を左に曲げたときに、どこに張りがでますか?
B さん:右の首筋ですね。


下條:ここですね。(写真25 参照)
はい、では左に曲げていきましょう。
私が今ここ(右首筋)に指先だけ触れていきます。
下條:これは先ほどより曲がっていますか?
痛みや張りはどうでしょう。
B さん:この辺が少し。
下條:今度は先ほどと違う場所ですね。
先ほどのこの筋はどうですか。
B さん:張りはないです。
これでなくなります。
少しだけ横方向に筋肉のストレッチをかけています。
この縦の筋の筋肉に対して、横に今優しく指を置いています。
ただこのときの角度や圧の強さは考えておかなければいけません。
下條:(手を触れたまま)もう戻していいですよ。
先ほども言いましたが、身体に触れるとき、離すとき(手を離しながら)、呼吸を全部見ていきます。
下條:はい、いいですよ。
これでもう一度左に曲げてみてください。
残った2 は今いくつくらいになりましたか。
B さん:0 に近いです。
0 ではないですけど、0 に近いです。


下條:0 に近い。
少しまだ残っているのですね。
B さん:少しだけ。
このように触れるだけで緊張をとることができます。
関節の位置に問題があれば、緊張はとれてきません。
今回はその筋肉の張りにまだ残りがありましたが、それを取ってあげたということです。

 

このように回復整体では、変化をその場で出して、帰すことができます。
また、この方が右腕を極端に使ったとか、ずっと左側で作業しなければならなかった場合、また右側に
張りが出てくるケースもありますが、それを繰り返しとってあげて、正しい位置を教えてあげることで
症状は出なくなります。
この療法はそういう療法です。
これをうまく利用してください。

【施術例2 動作時の不調】

曲げて痛い、あるいは伸ばして戻すときに痛いなどの動作中の痛み、例えば何年も膝を曲げるときに痛
みがあり、正座をあきらめているというような方の骨の位置、膝や関節の位置を正しい位置に変えてい
く手法もあります。
レントゲンは静止した状態で撮るので、映るほどのずれはないのですが、
動作中に本来の正しい位置よりほんの少しだけ関節がずれてしまうというケースがあります。


図1を見てください。
膝を曲げたときに体重がかかりますので、
A の方向に斜めに骨が少しずれてしまいます。
そこで、Bに圧を入れ、Cにも圧を入れることによって、
正しい動きを再現してあげます。
「正しい位置はここですよ。」「ここで動くのですよ。」
ということを教えてあげれば、この曲げ伸ばしの痛みがなくなっていきます。
膝の痛みや肘の痛み、動きの硬さや手首、足首の硬さの気になる方など、
関節は構造的には同じですから指一本一本でも全て同じやり方で改善することができます。
Cさん:正座をしようとして足首を伸ばすと痛みが出ます。
下條:正座をするとどこに痛みが出ますか。
Cさん:左足のくるぶしの前ですね。
下條:いつぐらいからですか。
Cさん:9ヶ月前くらいです。
下條:何をきっかけに痛みが出始めましたか?
Cさん:痛みは足の疲労からだと思います。

 

こちら側に体重がかかりやすい動きをしていたので。
下條:曲げるときではなく、伸ばす時が痛いのですね。
Cさん:そうです。
下條:正座をしようとして、お尻を下げていく動きは全く問題ないのですか。
Cさん:途中で、痛みというか硬さを感じます。
下條:では正座をしてみてください。
足首がどれくらい曲がるのか。
無理しないでくださいね。
だんだん曲げていくと、左足くるぶしの前あたりに痛みが出ますか?
お尻が足までつくことはつくのですね。
Cさん:少しこう浮く感じです。
下條:そうですね。右の方に体重を乗せて座っていますね。
こういう場合は膝全体を緩めたり、骨盤を調整したりする必要があると判断しますが、今
回はすでに体幹の歪みをとってあります。

下條:正座をするときの最後のぐっと伸びる時に伸びきらないということですね。(写真27 参照)
(左くるぶしの前を触れながら)ここに今痛みを感じていますか?
Cさん:そうですね、この辺です。
下條:はい、正座をしたときに外側に痛みがありますね。
Cさん:はい。
下條:もう一回少し前に体重を乗せてください。手をついてもいいです。
(足首を持ち、向きを整えながら)
はい、これで座ってください。
少し足首の関節の動きを正しい位置に補助していきます。


(写真28 参照)
下條:これではどうですか?
Cさん:少し張りがありますけど、特に・・・。
下條:(足首とかかとを持ち、向きを整えながら)
ではもう一回前に体重をかけてください。
座ってください。
Cさん:ああ、引っかかりはないです。
下條:引っかかりはなくなりました。
これが正しい方向です。
前に体重をかけてから、また座るという動きをゆっくり3回繰り返してください。
一回。これで痛くないですか。

Cさん:はい。
これが本来の正しい動きだということを脳が忘れてしまっているのですね。こちらが正しい位置なので
すよと教えてあげます。


下條:もう一回いきましょう。痛くないですか。(写真29参照)
Cさん:はい
下條:もう一回。
これを繰り返しやる必要があります。
かなり足首の関節が硬いです。
下條:(手を離して)はい、いいですよ。
前に体重をかけてください。
下條:これで正座してみてください。
下條:すごく左右きれいに体重がかかるようになりましたね。足首の位置は今どうですか?
Cさん:今は左足首のほうが柔らかいです。
下條:左足首の方が柔らかい感じですね。
Cさん:右足首のほうが硬さを感じます。
下條:右足首の方が硬いのですか。
これは周りの筋肉が緩んだということもありますが、関節が正しい位置に落ち着いてくれたということ
です。脳も正しい足首の使い方を思い出してくれたということです。
例えば、長時間立ち続けたり、急にたくさん走ったりすることで少し戻ってしまうケースもちろんあり
ますが、「こちらが正しい位置なのですよ。」「緊張しなくていいのですよ。」ということを教えてあげる
ことで、数回の施術で痛みをとることができ、正しい位置で定着させることができます。
そして症状が出なくなったら、間を空けていきながら施術をしていけばいいということです。それで卒
業でもいいですし、月一回のメンテナンスに来ていただくこともできるということです。
下條:立ってください。
骨盤や体幹のねじれが、足首に影響することがあるので、当然体幹部をしっかり整えることも忘れない
でください。後で周りを緩めるともっといいでしょう。戻らなくなります。

 

今のCさんのケースでは、脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)の関節の位置、足首の関節の位置を本来の正しい位置までサポートしてあげたということです。


少し細かい筋肉や関節なので、少し見づらかったかもしれませんが、写真30 の不調者さんのように膝の位置が少しずれている場合、体幹を揃えて、膝の位置を正しい位置に修正、調整してあげると、ほんの小さなずれが正しい位置にきます。
ずれている方向が正しい位置にきただけで、その場に座ることができるようになるのです。
もちろん無理があったらいけません。
無理にやるより、痛みがなく、抵抗のかからないやり方で正しい位置に持ってきてあげるほうが、脳が安心でき、その場で座れるまでになることが少なくありません。
もちろん、周りの筋肉や骨盤の捻れの影響で、一回では改善しないこともありますが、繰り返し正しい位置まで持っていってあげれば、徐々に正しい軌道を思い出して、曲がるようになっていきます。

【施術例3 O脚】


写真31 を見てください。
このO 脚の人についても同じです。
骨盤の位置、足の使い方が間違っていたため、膝のお皿が内側を向き、隙間ができていましたが、施術によりお皿が正面を向くようになり、正しい位置まで調整されてきました。
周りの筋肉も同様に正しい位置になりました。

【施術例4 猫背】


次に写真32 を見てください。
この写真はどのような重心で立っているか見るために、パソコンで重心位置に線を引いてあります。
耳の位置からまっすぐに線をひきましたが、ずいぶん身体の前側に重心があるのがわかるでしょう。

施術後はすっと胸が張れるようになり、背筋のふくらみや背中のふくらみ、骨盤の角度が変わってきま
した。
重心がずいぶん後ろに移動し、中心に来るようになりました。
繰り返し正しい位置を教えることで、このような変化が見られるようになります。
身体が反発することなく、正しい位置に持ってくることによって歪みをとり、筋肉の緊張を解くことが
できるということです。

最後に

このように脳の反応をうまく利用し、脳幹の緊張を解いていけば、本当に患者さんに無理なく症状を改善できるということがお分かりいただけたと思います。

開業し、治るということが評判になってくると、多くの重症な方がお見えになります。

すると私もそうなのですが、見た目が派手な手法や大きな技をやりたくなるものです。

しかし、それよりも一見地味に見えますが、優しく触れて緊張を取るということがたいへん重要になってきます。
もし重症の方が来たときにはあわてずに今日の講義を思い出して、優しく触れ、優しい言葉がけと表情でその方の緊張を解いてあげてください。必ずいい結果がでます。
現場でたくさんの方が笑顔になるように皆様もがんばってください。

私もそれを祈っています。


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