現在の社会情勢から、日本人が日本の風土や環境において、健康的に生活するための姿勢や動作が見失われている。
日本の自然環境や、古来からの生活習慣に合わせた適切な姿勢や動作というものが存在していた。
環境に合わせた様々な生活習慣、特に家屋で住まうための姿勢や動作などは、家庭の中で子供の頃から「躾」として行われていた。
例えば、昔は食事の際には、家族がそろって、正座をし、背筋を正して食事に集中することが当たり前であった。
子供達が姿勢を崩し、食事をしていれば、一家の主たる父親、母親が厳しく姿勢を正して食事をするように躾けたのである。
ところが、現代では、子供達に食事をする際に、何故、背筋をただし、食事に集中しなければならないのか、大人がその躾について意味を理解していないのである。
テレビを見ながら、本を読みながら、イヤホンで音楽を聴きながら・・・
大人が姿勢を正すことの意味を全く知らない。
大人も子供も、同じようにでたらめな姿勢で食事をしている。
ファミリーレストランに出向くとよく分かるが、両親はテーブルに肘を着いて、足を組んで食事をしている。
子供達は、大声を出して、店内を走り回っている。
他人の迷惑などお構いなしにである。
ここでは、現代社会の食事について、殆どの家庭で躾がなされていないことを例に挙げてみた。
しかし、食事のときの姿勢だけではない。
人前に出たとき、自らの姿勢が正しくないと、他人に迷惑がかかることさえも全く知らない。
姿勢を正すということは、周囲の人間から見ても、とても気持ちがよく、不自然ではない。
しかし、姿勢が悪いと、周囲にいる人間も見た目に不愉快に感じられるし、姿勢が悪いと何かやましいことをしているのでは・・・という憶測が生じる。
不愉快な姿勢と言えば、コンビニの前で若者がたむろしている姿を見たことがあると思う。
ほんの数年前、若者達は膝を曲げて座っていた。
いわゆる、「ウンコ座り」と言われる姿勢である。
しかし、最近はどうであろうか?
若者の筋力の低下が叫ばれる昨今、コンビニの前に座っている若者の姿勢は、既に「ウンコ座り」さえ、出来なくなってきている。
「ペッタン座り」とでも言えばよいだろうか、地面に直接お尻を付け、背中を丸めている姿勢が目に付く。
よく見ると、これらは、テレビゲームをやっているときの姿ではないかと思う。
背中を丸める姿勢は、特に背中の筋肉に多大な負担をかける。
背筋は常に伸ばし、時々緊張を入れてやるくらいが丁度よいのである。
しかし、背中を丸め、前傾姿勢が続くほど、背筋に疲労が発生する。
骨格的に背中が丸まっている状態は、頭の重みで身体が前に倒れないように常に負荷をかけていることになる。
これは魚釣りで釣竿がしなっているときと同じ状態なのである。
すなわち、魚の引きで竿はしなるのであるから、その負荷は釣竿にそのままのしかかっているのである。
このたとえと全く同じで、背中が丸くなっている状態とは、常に背筋に負荷かをかけているということである。
背中を丸め、力を抜いている状態が、楽なように思えるが、実はその状態がいちばん疲れるのである。
いちばん良いのは、適度に背筋を緊張させ、一定の姿勢を長時間保たないことである。
しかし、最近の日本人の姿勢は、上記の例のように子供達はテレビゲーム、携帯型ゲームを毎日のように行い、大人は仕事でパソコンの前に座りっぱなし、休憩時間であっても、携帯電話でメールを何分も飽きることなく行っている。
座ることも、楽なように思えるが、何時間も他の動作をすることなく、イスに腰掛けているとどうなるか?
私も経験がある。
先ず、足関節がガチガチに硬くなる。
足関節が動かなくなるのだ。
そして、膝が痛くなる。
股関節が引っ張られるような気持ちの悪い違和感が出てくる。
長時間座った後、立ち上がり、歩こうとすると、下半身、上半身全ての関節が制限をかけられ動きにくくなる。
ずれた骨盤に腹圧がかかり、臓器の受けが偏ることで、肛門に偏った圧が加わる。
すると切痔やイボ痔の原因となる。
それだけではない、骨格的に背中が丸まった状態が長時間つづくと、背中が張り、大胸筋や腹直筋が萎縮し、呼吸の際に横隔膜が上手くあがらなくなる。
すると、呼吸に制限がかかる。
呼吸が上手くできなくなるということは、生命にとって一大事である。
呼吸に不安が出てくると、人間は意味もなく、不安になる。
現代社会では、うつ病や神経症の人間が増えている。
その原因の一端は、上記のような姿勢からのものが原因のものが多数ある。
我々は、現代社会において、骨格上の問題である、日本人として生活環境にあわせた姿勢をとることで様々な健康障害を回復できるという観点から現代社会の健康問題を考察する必要がある。
今回紹介する、「姿勢健康回復法」は、上記のような現代社会特有の身体にとってもっとも負担となっている姿勢について特化して、その原因を根本から正すことを回復法を活用し問題を解決していくことを目的とする。
この技法は、特に、長時間の座り姿勢からおかしくなっている、足関節の可動域を広げ、更にディスクワークや長時間のゲームなどの姿勢から骨格筋が過度な緊張、弛緩、萎縮している部位に対して多角的にアプローチしていく方法である。
上記の理由から、この技法では、足関節、膝関節、股関節、骨盤、仙骨、肋骨、肩甲骨(脇下の筋肉群)、鎖骨、頚椎椎間板等、姿勢を正し、歩くこと、呼吸することが健康的に出来るように、物や人の助力なく、本人が骨格を自律して維持できるように仕向ける技法である。
特に、足関節の可動域が失われるということは、人間にとって本来は生命の危機であると考えることが出来る。
一つは、人間は食物を得なければ生きていけない。
本来、人間も動物である。
自然な環境下であれば、足を使って食物のある場所まで行かなければ、食物を得ることは出来ない。
すなわち、歩くことが出来なくなれば、食物を得ることが出来ないと言うことである。
人間にとって、歩くことが困難になることは、本来は飢え死にすると言うことにつながる。
幸い、現代社会では足腰が弱くなった弱者であっても、福祉環境が整っているため、食物にありつけないということはない。
もう一つ、足関節の可動が失われるとは、一種の老化現象といえるだろう。
最近は、高齢の方だけではなく、本来いちばん関節が自由に動かなければならないはずの子供達の足関節が老化現象を起こしているのである。
これは、やはり外で遊ぶことが少なく、家の中でゲームばかりしていることが原因の一つではないかと思う。
足関節の可動が失われると、更にその上部の関節も可動が失われてくる。
関節はそれぞれ独立しているわけではなく、全て連動して動作することで健康的な動作が出るように作られている。
現代の子供達に、膝関節がおかしくなる病気、「オスグット病」がかなり増えている。
数年前から、増えてはいたが、最近は珍しい病気ではなくなっている。
我々の施術所にも、頻繁にこの症状で施術に見えている子供達が急増している。
子供達の将来の健康不安についても、足関節の柔軟性は重要なことである。
同時に、背中を丸めることで呼吸に関係する症状も増えている。
不安は呼吸に問題があると、意味もなく起こると前述した。
子供達の間でも、このような症状が本当に多くなっている。
登校拒否、引きこもり、うつ病・・・
これらも、骨格的な問題が解決することで、だいぶなくなると推測している。
先ずは、胸を張って、大きく呼吸が出来れば、自然と不安がなくなる。
気持ちが前向きになり、様々な困難にチャレンジしようとする気構えが出来る。
姿勢健康回復法は、上記のような現代の日本人特有の様々な症状について解決できる特性を持っている。
日本人は、畳と布団の生活様式であった。
ところが現代は洋風の家屋、洋風の家具を使う家庭が圧倒的に多くなっている。
畳や布団での生活は、先祖代々、どのような生活をすればよいか、受け継がれてきた。
しかし、洋風の家屋に住むための、生活の仕方、例えば、イスの座り方、テーブルマナーなど、西洋では当たり前のように使っている家具についても、日本人はなんら使い方を知らない。
ここで言う、使い方とは、イスという家具をどのような姿勢で使えば健康的に生活できるか。
と言うことである。
イスに、「ただ腰掛ける」だけではだめなのである。
畳で生活するためには、それなりの生活の仕方がある。
同じように、西洋の家具や家屋の使い方にも身体を健康的な使い方にあわせるべきである。
しかし、それらを全く知らずに日本人は生活しているのである。
ここに問題がある。
姿勢健康回復法では、このことに焦点を当て、生活指導も行わなければならない。
以下に説明する技法は複数あるが、全てを行うということではない。
検査において導き出された骨格診断によって必要なものを取捨選択すること。
施術の時間は、回復法の理論に基づき最短の時間(30分以上の時間をかけない)こと。
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