「日本人の姿勢がおかしくなっている理由」を回復整体で考える

はじめに

「目の前の患者さんの痛みを取ってあげたい」施術家なら誰でもそう考えるでしょう。

そのような真剣な思いがあるからこそ、ふとすると施術家は不調者さんの痛みそのものにしか目が向かなくなることがあります。

「どのように施術すれば痛みがとれるだろうか。」
「どんな手法が有効だろうか。」
もちろんそれはとても重要なことです。
しかし、その不調者さんが、そして現代の日本人が多くの痛みを抱えているのではなぜなのでしょうか。

回復法では呼吸やホメオスタシス(恒常性)などの生理的な現象を利用して、不調者さんの痛みを取っていきますが、その回復法の効果を最大限に

引き出すためには、痛みや歪みの背景として、現代日本の社会的な構造や文化があるということを知らなければなりません。

~日本人の姿勢はなぜおかしくなっているのか~

(1)現代の子供の姿勢

十数年前はオスグッド病や側彎症などで整体に通う子供が増え、驚かされたものですが、今ではそれも珍しいことではなくなってきました。

喘息や足首の痛みなど、不調を訴える子供がますます増えています。

時代の流れで日本人の生活様式は一変し、子供の姿勢が悪くなってきたためです。

日本人の骨格は、生活に耐え得るものではなくなってきているのです。
子供の姿勢が悪くなっていることは、子供の責任ではありません。
私はファミリーレストランなどに行くと、必ず周りの人々を観察するようにしています。

週末は特に多くの家族が食事にきていますが、お母さんはひざを組みながら食事をし、お父さんは本を読みながら、子供はゲームをしながら食事を

しているという様子がしばしば見かけられます。
背筋を伸ばし、正対して食事をしている家族を見かけることは滅多にありません。

子供だけでなく、家族単位で姿勢が悪くなっているのです。
姿勢が悪いということは、見苦しいものです。
時には、見苦しいを通りこして見る人に恐怖を与えることもあります。

コンビニでたむろしている若者が背中を丸め、手をポケットに
突っ込んでいたら、それだけでお年寄りは怖いと感じるでしょう。

恐怖を感じるということは、既に骨格の変容を起こしているということです。
見えない情報空間の中で攻撃を受けており、その見えない攻撃は実際に肉体的変化を起こします。

それは社会のネットワークの中で生きていく上で、お互いの不利益となります。

(2)姿勢は躾の中で

姿勢は、子供のころからしつけとして教えていかなければ、なかなか身に付きません。

「腰が曲がってきたから、背筋のトレーニングを一生懸命やろう」と、どれだけ運動をしても、姿勢が悪い人は悪いままです。

スポーツで何時間も練習して筋肉を鍛えたとしても、その鍛えた筋肉を使うのは主にその競技の間だけです。

例えば、ウエートトレーニングや筋力トレーニングで、背筋の筋肉を鍛えたとします。

どれほど筋肉隆々になったとしても、その筋肉はあくまでバーベルなどの重いものを持つための筋肉でしかないのです。

しかし、姿勢は24時間続きます。

立つときには背筋を伸ばし、歩くときには胸をはるなど、日常の中でその動きを常に習慣化していかないと、そういった身のこなしはできないものです。

食事のときに背筋を伸ばすことや正座をすること、学校でも前を向いて正しい座り方をすることなど、しつけを通して教育していくしかありません。

(3)おばあさん仮説

 

では、なぜ正しい姿勢をする躾が行き届かなくなってしまったのでしょうか。
昔はそういった姿勢の悪さを、科学的な根拠はなくても「お行儀が悪い。」
などとおばあさんが注意してくれました。

おばあさんによって経験や道徳として、しっかりとしつけられてきたのです。
長谷川眞理子さんは、編著『ヒト、この不思議な生物はどこから来たのか』の中で、「おばあさん仮説」を紹介していますが、私はこの仮説が現代の姿勢についての問題に関係していると考えています。

「おばあさん仮説」はクリスティン・ホークスをはじめとする何人かの人類学者たちが「女性が自らの繁殖から解放されたあと、その知恵と経験を生かして自分の娘や血縁者の子育てを援助することにより、繁殖成功度を上昇させることができたからではないか」という仮説です。
繁殖から解放された女性、つまりはおばあさんが、知恵と経験により食料の採取や赤ん坊を世話したり、病気への対処法、社会的な対立や葛藤の乗り切り方を母親に伝えたりすることで、母親の労力が軽減され、次の子供をより速く産むことができるようになったということです。

その役割のために、ヒトの女性はチンパンジーなどに比べ、閉経後も長生きするという説だそうです。
人間以外の霊長類の雌は、閉経してしばらくすると寿命を迎えるそうですが、ヒトは閉経後も何十年と生きることができます。

他の霊長類のほとんどの種は、一産一子であり、子育ての期間が長く、ヒトに比べて出産間隔が長くなっています。
サルは母親が子供を産んでもおばあさんがその子育てを助けるということはなく、それがサルの進化過程においてとってきた種の繁栄のためのシステムです。

では、人間はどうだったのでしょうか。
昔は子供が生まれても、すぐに死んでしまうことも珍しくはありませんでした。
ではどうしたら繁栄することができるかというと、簡単に考えれば子供を多く産むことです。

妊娠し、出産し、またすぐ出産することを繰り返すことが、種の保存につながります。
一人が出生後まもなく亡くなったとしても、4人残っていればその家は存続します。

しかし、1人の女性が5年間に5人の子供を産んだとして、一人で全員を育てられるでしょうか。
種の保存の観点では一見効率的ですが、子育てにかかる労力は多大なものです。

そこで、閉経後の女性の出番です。
閉経した後の女性は出産することではなく、家族を育成するための活動に切りかえ、子供達の子育てを支援することで、間接的に種の保存に貢献してきたのです。
その家族を育成するための活動を支えるものは、知識ではなく、伝統に基づいた生きるための知恵でした。

先祖から受け継いできた知恵です。
例えば、若い世代の母親が子供を育てているときに、子供が熱を出したらどうしたらいいのかという知恵を授けたり、母親が働いているときにはその子供の世話をしたりしてきました。

そのようにしておばあさんが、人類を発展させるキーワードになってきたという説です。
私はこの仮説の中でおばあさんが果たしてきた役割が、子供達の姿勢にも大きな影響を与えてきたと考えています。

正しい姿勢をとることが、先祖から受け継いできた健康を保つための知恵の一つであったのだと思います。
しかし、今は核家族化などによりそれが伝わらない世の中になってしまったために、

子供の病気や骨格の変異などの様々な症状が加速度的に増えてきたのです。

(4)核家族化

今、日本では核家族が進んでいます。
夫婦単位で暮らす人が増え、高齢者と若い世代が分裂しています。
核家族化が進むと「核家族化は国を滅ぼす」というようなことがよく言われるようになってきました。

そして核家族化や高齢者を考慮した事業展開をしており、「お年寄りを大切にしない国は滅びる」ともおっしゃっていましたが、それは道徳的なことだけではなく、人類学からいっても正論なのです。
もちろん、若い世代が高齢者を支える世の中は若者の負担が増え、ある意味生きる気力や将来の夢などが失われていることも問題です。

きれいごとだけではなく、どうしたら高齢者と若い世代が互いに尊重し合って生活できるかということが日本を発展させていくことにつながると考えています。

こうしたことを日本人全体で考えて政治に反映冴えせていく以外にないと思いま。
具体的にどうやればいいのかは様々な方法があると思いますが、ここでは、なぜ「高齢者」が必要であり、それが種の保存につながるのかという独自の視点で述べていきます。

話を戻します。
「おばあさん仮説」でいうと、高齢者は生きるためのすべをたくさん持っていますが、核家族化が進んだことにより、そのすべが若い世代に伝わりにくくなっています。

つまり、子育てがしにくい世の中になっているということです。
核家族では、たくさん産みたいと思っていても、経済的な面から共働きになると子育てが困難になり、なかなか生むことができません。

少子化が問題になっていますが、根底としてこのような問題があることが子供を産む妨げとなっているのです。
このまま少子化が進めば、日本の国民の人数が激減し、国が滅ぶことも冗談ではなくなります。

核家族化の前兆は戦後から出始めていました。
高齢者を馬鹿にするような社会になってしまっているのです。

若い人がお年寄りを見ると、「汚い」とか「あっちへ行け」などと暴言を吐くこともあり、お年寄りを敬わなくなりました。
お年寄りに感謝できない世の中になってしまったのです。

核家族化により、おじいちゃんおばあちゃんと暮らさないから若い人がお年寄りを理解できない、できないためにさらに核家族化が進むという悪循環です。
本来、お年寄りは生きるすべを教えてくれる大事な存在であるにもかかわらず、適当にあしらい、その知恵を享受する環境を自らなくしてしまっているのです。

人間は家族単位で生活しているので、人類が繁栄していくためのシステムがうまく働かなくなってしまっていることが一番の問題なのだと思います。

(5)子供は親を見て育つ

子供は親を見て育ちます。

姿勢はしつけで教えられる以外にも、子供が日常生活の中で親の姿勢を真似することでも身についていきます。
子供は生まれたときから親とともに育っていくので、病気などを親から受け継ぐのは遺伝だけではなく、姿勢を初めとする生活習慣を真似しているためでもあるのです。
子が親の姿勢を真似ることで、歪みや骨格が似てきます。

私は何組もの親子を施術してきましたが、筋肉の付き方や骨格の動きが似ており、痛くなるところも同じです。まるで生き写しです。

子供のころから親の姿勢、動き方を見てきて真似をし、習慣化するため、大人になってから変えようと思ってもなかなかできるものではありません。
核家族化が進み、お年寄りの世代の知識や知恵を授からなくなり、分断されてしまったために、親の悪い姿勢をそのまま子供が受け継いでしまい、
矯正されないまま大人になってしまう世の中になっているのです。

(6)社会的ネットワーク

子供の姿勢を正していたのは、実の親や家族だけではありませんでした。
昔は自分の子供ではなくても、悪いことをすればまわりの大人がちゃんと叱ったものです。
人間というものは社会的ネットワークを持ちながら生活している種族であり、1人では生きていけません。

コロニーを作らずには生きていくことができないのです。
無人島で一人暮らす人もいるかもしれませんが、基本的には人の協力を得ないと生きていけない動物です。

特に日本人は家族の絆がとても強い民族で、昔は家族の中の役割が非常に重んじられてきました。

また、日本の風土で生きていくための文化や伝統などを柱にしながら、風土に合わせた生活様式を非常に大切にし、季節や自然に逆らわずに協調して生きていくためにどう生きていけばよいのか、昔は先祖やおじいさん、おばあさんから引き継いできたのです。

目に見えないものも大切にしてきました。
宗教というわけではなく、生きるための柱となる部分をしっかり植えつけられてきたということです。
おじいさん、おばあさんは社会的なネットワークを作るうえでも貢献してきたのではないでしょうか。

それが、核家族化が進んだことで、個々や家族が繋がりを失い、社会的ネットワークが弱まってきたのだと思います。
そしてそのことが、現代の子供の姿勢にも影響を与えているのです。

(7)新しい文化

現代の子供の姿勢を悪くしている原因は他にもあります。
現代は、パソコンや携帯電話、ゲームなどを使う場面が増えてきました。

これら自体が悪いというわけではなく、問題はこれらを使うための姿勢の教育がされていないことです。
携帯電話を1時間使い続けたらどうでしょう。

目も筋肉も使います。目をつかう時さえ、筋肉を使います。


メールをしたり、ゲームをしたりと飽きずにしているので気づきませんが、指一本をずっと見続けていられるでしょうか。
相当に疲れるはずです。眼球は一点を注視することで酷使されます。

他の筋肉に置き換えてみると、5キロのダンベルを持ち続けたら腕の筋肉はガチガチに固まってしまいます。
眼球でも同じことが言えるのです。

視神経を酷使すれば、視神経はガチガチに固まり、全身が疲れます。
何分おきに遠くを見たり、胸を開いたり、昔は誰もが知っていたことを核家族化が進んだことで今の親は知らないので、教えることができません。

(8)大人になるための予行演習期間

子供は無駄な動きを多くします。
転んだり、木に登って落ちたり、まっすぐ歩けばいいのに飛んだりはねたり、
大人から見ると「あんな動きをしたら疲れるだろう」というような動きばかりです。

それが大人になるための予行演習であり、準備なのです。
無駄な動きをしたり、転んだりしても、子供はちゃんと一晩寝かしてあげれば、

寝返りなどによって、日中の無駄な動きで使った筋肉の反対の筋肉(拮抗筋)を
動かすことにより、縮んだ筋肉を伸ばして、修正しています。
朝にはリセットされた状態に戻っているのです。

しかしながら、今の世の中ではテレビゲームばかりやっている子供も
少なくはありません。
そして、前述したようにそれを使うための教育がなされていません。

関節というものは、動かさないと老化してしまいますので、
子供でも足首がガチガチな子が多く、また足首が固くなると膝もどんどん
悪くなります。
連動した筋肉を動かすことで、いろいろな組織が柔軟性を保っているのです。


子供の場合は柔軟性があって当たり前だったのですが、
全身ガチガチな子供が増えています。
子供のころから膝や足が悪い子供が大人になるころには、その不調は倍々で
悪くなる一方です。

(9)現代の生活習慣

 

テレビゲームに限らず、現代社会ではOA機器や新しい電化製品など次々と新しいものが生活に入ってきます。
その時に、それを一番健康的に使うための姿勢を我々は考えていかなければなりません。
日本人は昔から畳の上で生活してきました。

寝るときには畳の上に布団を敷いて寝ましたから、子供からお年寄りまで布団を敷いたりたたんだりする際にはしゃがまなければなりませんでした。
トイレも和式でしたから、必ず膝を折り曲げました。
食事の際には、正座をしました。

このような動作をすることで、膝関節や足首の柔軟性が保たれていたのです。
日常的にこういった運動を繰り返していたために、日本人は非常に足腰の強い民族だったのです。

昔調べた記事によると、日本人は欧米人に比べ、高齢者が転んだときに骨折する確率が少ないそうです。
欧米人は椅子での生活に慣れていますので、正座やあぐらをできない人も多いようです。

膝が曲がりにくく、高齢者は特に足首が固くなってくるので、つまずいた時に大きく転んでしまうことが多いのです。
日本人は上で述べたような生活を小さなころからしているため、転んでもぐっと粘り、受身が取れます。

高齢者に対しても安易にバリアフリーにしてしまうことで、足腰を使わない生活習慣になり、ますます弱ってきてしまうこともあるのです。
やむを得ない場合もありますが、高齢になると粘り腰が利かなくなりますから、足腰を使わない環境はよくない面もあります。
現代は畳のない家も多くあり、正座や布団を敷く習慣もなくなっています。
ベッドだと、膝を軽く曲げ伸ばしするだけで済んでしまい、足腰が鍛えられません。

日本人の文化や環境に照らし合わせると、効率的ではない身体の使い方をする環境になってしまっているのです。
また生活が夜型になってきたということも原因の一つに挙げられます。

昔はコンビ二などなく、夜になればお店も閉まり、深夜番組も今ほど放映されていませんでしたので、暗くなったら寝るという環境でした。
子供は特に早く寝ていましたが、今は、子供から大人まで、夜遅くまでおきています。
一番睡眠をとらなければならない子供達まで寝不足です。

現在は深夜営業の職種も多くありますが、人間がこのような環境になってわずか十数年です。
昼間働き、夜寝るという、日の出・日の入りに合わせた習慣が人間の遺伝子情報の中に組み込まれているのにも関わらず、世界中でそれをむしした活動が行われている
のです。

そういう生活をせざるを得ない方もいると思いますが、それならば何か工夫すべき点があるはずなのに何の工夫もしていません。
このように姿勢という視点から、現代の日本人の生活を見てみると、確かに楽で便利な生活になってきたのですが、楽をすれば健康的でいられるかといえば、そうではありません。

昔の日本人は、身体の面から見るととても理にかなった、自然な生活をしていました。
それが現代の日本の社会で失われてしまい、骨格がかなり乱れてしまっているのです。

~回復整体の考え方~

(1)回復整体は整体という名の運動療法

回復整体は整体という名がついていますが、運動療法のようなものであり、スポーツのようなものです。
もともと持っている人間の生理現象を応用しています。
先ほど述べたように、夜に筋肉痛や痛みがあっても一晩寝て起きたらだいたい良くなっているものです。

その現象を利用しているのです。
それに加え、感情が身体や骨格にどのような影響を及ぼしているかを研究しています。
整体師の先生方は、人の身体に触れるという技術的な部分を一番大事だと考えていると思います。

しかし、私達は、それは方法の一つであって、一番大事なことは人間というものを理解することだと考えています。
特に人間がどういう働きによってうごいているか、何のため、またどんな方法で種を保存しているのかという人類学の面からも身体を見ています。
ですから、脳の役割を重要視しています。

(2)脳の働き

人間の脳は他の動物に比べ、非常に大きなものです。
大脳は特に大きく、大脳には新皮質と旧皮質(古皮質)があり、新皮質は理性や知性、想像性などの人間の高度な精神活動をつかさどり、創造性旧皮質の方で悲しみ、怒り、恐怖などの情動を感じています。

動物的な感情をコントロールするために大脳が発達し、人間らしい行動をするために、大脳が発達してきたのです。
回復法で、感情に重点を置いているのは、からだの不調を取り除くことについて、脳の働きを重要視しているためです。

(3)感情と脳

例えば、施術所に5年間膝の痛みを抱えて歩くのもままならず、日々痛みと戦い、少しでも痛くないようにどう生活していこうと考え続けている方がいらしたと
します。

現象だけを見れば、膝のどこかに不調があるから膝が痛いということです。
しかし、その方の感情を考慮に入れれば、そこに不調以外のもう一つの原因が見えてきます。

毎日痛みと戦う生活をしている人は、マイナスの感情を持っており、マイナスの感情というのは、恐怖や不安など、脳の原始的な部分、古い脳が
感じているものです。

「痛いから嫌、怖い、この先どうなってしまうのだろう。」そういう状態の人の脳は、
健康的な生活をおくっているわけではないので、ストレスを感じています。

脳の中ではアドレナリンが常に分泌され、交感神経が働く原因になり、いつも身を構え、興奮した状態が続きます。
その状態が慢性的に続いているため、膝以外の全身がストレスを受け緊張しています。
そういう状態の方に、こちらが事務的な受け答えをしていたらどうでしょうか。

人間はネットワークによって生活しているため、技術だけではなく、対面したときの見えない空間の部分も重要になります。
こちらが相手の不安を助長するようなことをすれば、相手の骨格はそれだけで変化し、緊張させてしまうのです。
緊張させないためにはどうしたらいいのかといえば、相手の感情をこちらがくみ、それに応じた対応をし、相手の心を快にしてあげればいいのです。

痛みを取って、相手の気持ちに共感するだけで、相手の脳は「ここへ来ると安心」とインプットします。
すると痛みがない時も、「痛くなってもここにくれば大丈夫」という安心感を得て、ドーパミンという脳内物質が分泌され、交感神経の働きを促します。

また安心することで、不安が希望に変わりますので、身体も楽になります。

すると骨格は交感神経から副交感神経が優位に変わり、リラックスすることで身体が柔らかくなります。その繰り返しで不調者さんはどんどんよくなっていきます。

単純な理屈を述べただけですが、技術的に痛みを取るだけでなく、しっかりした対応をし、相手の感情を慮って活動したときに、本当の施術ができる
ということです。不調者さんとの対応法には科学的根拠があるのです。
また人間は、小さい頃からいろいろな経験を積み重ねて生きているので、施術者に対して不快な感情を持ってしまったら、それが経験となり、施術者を思い浮かべるだけで痛みを感じてしまうこともあります。

(4)条件反射と無条件反射と脳

例えば、熱湯の中に手を突っ込むと熱さを感じ、無意識に手を引っ込めます。
蚊が飛んできて目に入りそうになれば、無意識に目をつぶります。

これらは無条件反射で、生まれながらにもっている反射機能です。
一方、条件反射はパブロフの犬で有名な反射です。

パブロフの犬は、ベルを鳴らしてから餌をやることを繰り返すことで、ベルを鳴らすだけで唾液を出すようになったというものです。
訓練や経験などによって得られる反射機能です。
反射機能の延長線上にあるものが、プラシボ効果など感情が身体に与える影響を利用することです。

1回施術して心地よい経験をすると、不調者さんは先生方の顔を思い浮かべただけで、一瞬で骨格が元に戻ります。

プラシボ効果というものは思い込みで、その思い込みによって身体が変化します。
みなさんが思っている以上にプラシボ効果は大きな影響を身体に与えます。

驚くかもしれませんが、骨格というものは脳の中でイメージしただけでも大きく変わります。
脳がだまされることで骨格に影響を与えます。
脳というものは、現実と非現実の区別がつきません。

例えば、誰かがゴムの蛇を「毒蛇だ。」といって差し出したとします。

脳は瞬時にその蛇が本物かどうか判断し、本物だと脳がだまされてしまえば、身体が反応します。
ゴムのおもちゃの蛇だと判断すれば、何もなりませんが、現実か非現実かに関わらず脳がだまされてしまえば骨格に影響を与えるということです。

また過去の出来事によっても脳がだまされ、骨格に影響を与えます。
例えば交通事故に遭った方のトラウマ(心的外傷)のようなものです。

トラウマなどの心に受けた大きな傷が元で生まれる様々なストレス障害である心的外傷後ストレス障害(PTSD)も同じ原理です。
例えば大事故を起こして車がクラッシュし、大腿部を骨折し、エンジンオイルの匂いを嗅ぎながらその痛みに耐えたという経験をした場合、ケガが治った後もエンジンオイルの匂いを嗅いだだけで痛みを感じることもあります。

動物でも同じようなことがあります。

私はラブラドール・レトリバーを2匹飼っているのですが、その一匹を去勢したときのことです。
その犬は人間を全く怖がらず、従順で優しい犬でした。誰にでも直ぐ尻尾を振り、全く疑うことをしませんでした。

その犬をマイカーに乗せ、獣医師のところに連れて行ったのですが、1泊2日で去勢して帰ってきたら、車を見ただけでおびえるようになり、「遊びに行くのだから大丈夫!」と言っても信用しません。

恐怖体験が染み付いているのです。
それでも犬は単純なので、車に乗せずに歩いていけば、獣医に連れて行くこともできます。

感情が単純なのです。
しかし、人間はそうはいきません。

言葉もありますし感情が発達しているため、関連したもの全てからイメージしてしまいます。
多くの言葉や映像を過去の経験と結びつけてしまうのです。

心的障害のひどい方は、すべてにおいてといっていいほど過去の経験に絡めてしまいます。
するとそれだけで形状記憶合金のように、自動的に身体がその経験をしたときの状態に戻されてしまうのです。

これはどういうことかというと、イメージで脳がだまされているということです。
現実と非現実の区別ができていないのです。

回復整体では、その部分を大きく取り上げて、不調者さんの脳をいわばだまして、脳の働きを利用して、痛みを取っていきます。
特に不調者さんは、痛みというマイナスの感情を持って施術所に来ますから、これをいかに快にしていくかがたいへん重要な点になります。

ここに来ると楽になるということを刷り込んでいかなければなりません。
無条件反射を利用したものでは、背中を指先でツンと触ったら一瞬にして背骨がなおってしまう瞬間回復があります。

不思議に思うかもしれませんが、先ほど説明したように熱湯に指を突っ込むと、
意識する前に指を引っ込めることと同じ原理です。

触られた人は一瞬びくっとします。
プロレスラーのようながっちりした体型の人でも、ぼうっと立っているときに後から指先でツンと触られると、どんなに弱い刺激でも必ず緊張が入り、
シャキッと背骨がそろいます。

また小脳の働きを利用したものもあります。
例えば人間の歩くという行為は、最初から組み込まれている行為です。
赤ちゃんに歩き方を教えなくても、勝手にハイハイし、立ち、歩くようになります。

本能に組み込まれているシステムです。
しかしこれが歩けなくなるというのがどういうことかというと、例えば転んで膝を痛めたとします。

膝が痛い状態で歩いていると、意識的に痛い部分をかばいながら歩きます。
痛くない踏み込み方や角度を考えて動きます。
その動きは大脳が関与していますが、その動きを日々繰り返すことで、無意識にできるようになってきたときには小脳が関与しています。

野球のバッティングや車や自転車の運転と同じで、身体で覚えてしまうと何年たっても忘れません。
そのように間違った動きを身体が覚えてしまうと、多くの症状がでてきます。

膝を壊して膝の動きが悪くなると、その膝をかばった動きが繰り返され、神経が変な方向に引っ張られ、血液の流れも悪くなり、骨格が歪むためです。
そうならないためにどうしたらいいのでしょうか。
それは簡単です。

その間違った動きをやめればいいのです。
条件反射と無条件反射を利用して、正しい動きを脳に伝えてあげるのです。
回復法は身体に負担のない施術ですので、一見それでなぜ楽になるのかと不思議に思う方もいらっしゃいますが、脳の働きや生理的な現象を応用した効果の高い方法なのです。

(5)感情を考慮に入れる

脳の働きや生理現象を利用するためには、感情を抜いては考えられません。
相手が不快に思う情報は、すべて痛みに直結すると考えたほうがいいでしょう。

例えば眉間にしわを寄せて不調者さんに対応すれば、相手はそれを見て「何か怒っている」と感じ、その瞬間にストレスを感じ、緊張し始めます。
また男性の先生が、女性の不調者さんを施術する場合には特に清潔感も感情に大きな影響を与える重要事項です。

不潔と感じさせてしまったら、その時点で施術は成り立ちません。
施術をする場所の雰囲気や、色、匂いなど、感情に影響を与える全ての事柄に注意を払わなければなりません。

「嫌い」「不安」「ストレス」など心を不快にさせる感情が、骨格を歪めます。
先生方が対応する不調者さんというのは、マイナス思考の塊だと思ってください。

生きるか、死ぬかという痛みを持った方も来ます。
それほどの気持ちで来た方に対応するときは、自分の心も快にしておかなければ、相手の心を快にすることはできません。

「嫌だけど仕方がない。」という気持ちで対応すれば、隠してもその気持ちは不調者さんに伝わります。
人間の心臓は、ドキンドキンと鼓動していますが、これはリズムとして、相手の脳の電磁波に影響を与えているのです。

その心臓の拍動が脳の磁界に伝わるのだそうです。
このように施術者の気持ちや雰囲気は全て相手に伝わりますから、回復法は施術者がリラックスしていなければできないようにできています。

というのは、自分がストレス過多になっていると、相手への触れ方や感覚的な部分が鈍くなります。

触れ方を間違えれば、触れられた瞬間に攻撃されたように感じます。
触れ方だけでなく、握り方やタイミング、呼吸の使い方、そういう一見何気ないことが非常に重要なのです。

(6)まずは自分自身の感情を安定させる

まずは自分自身が疲れていないことです。
寝不足だったり、不安やストレスを感じたりしていると必ずそれが出ます。

常に自分の感情を安定させてください。
休みをしっかりとり、休みと決めた日はきちんと休みましょう。

一人でも予約を入れてしまえば、翌日「昨日は仕事をした。」という認識になり、それだけでも身体が固くなってしまいます。
好きなことをして、翌日の仕事に備え、まずは自分の体調と感情の管理をすることが大事です。

「仕事も楽しくやろう」と指導していますが、それは何も仕事に対する道徳的な話ではなく、それが不調者さんのためなのです。
不調者さんに「先生、疲れてそう。」「寝不足なのかな?」と感じさせれば、不安にさせてしまいます。

すると、脳の中ではアドレナリンが放出され、痛いところがますます痛くなります。
逆に先生が楽しそうにしていれば、不調者さんも安心し、楽しい気持ちになります。

その部分は考えなくても自然にできている方もいます。
そういう方は、知らないうちに大繁盛しています。

(7)不調者さんの感情へのアプローチ

 

この点においては私(小森秀信)も妻(小森やよい)にはかないませんでした。
私はもともとバリバリの技術バカのように施術してきました。

1、2年後に彼女が施術をはじめたのですが、技術は私の方が上なのにもかかわらず、私がやっても思うほど効果のでなかった5年来の不眠症の方を一回施術しただけで
眠れるようにしてしまったり、私が苦戦していたヘルニアの不調者さんを簡単に治してしまったということが頻繁に起こるようになりました。

なぜだろうと考えたのですが、プラシボ効果や相手の安心感以外には考えられません。
「今まで5年も悩んできたことがここに来たらすべて解決した。この先生は全部わかってくれる。」と、まず安心することで骨格が緩むのです。

信頼を得て話を聞き、こちらの指導を守らせる信頼関係を作ることが非常に大事なのです。

副学院長は、比較的母親からそういうことを教わってきたそうです。

「常に感謝の気持ちを持ちなさい。」「挨拶しなさい。」と教えられ、自然に相手のことを思いやることのできる感性を育ててきたのです。
以前私はただやればいいと考えていた技術バカで、感謝できず、思いやりもありませんでした。

妻(小森やよい)との違いに気づいた際、脳や感情、情動の勉強をし、脳の仕組みを理解し、やっと感情ベースで世の中が動いているということがわかりました。
ただ技術を磨くだけでなく、人を思いやったり、感謝したり、何かに感動したり、そういった感情に向かいあうことをしていかなければ不調者を良くすることはできないと思いしりました。成功している人は、この点ができています。
整体に限らず、商売すべてにおいていえることです。
まずは、自分の脳をいかにだませるかです。
ストレスを感じない自分を作り、たとえ失敗しても次に生かそうと前向きに考えていきましょう。

不調者さんにも同じように接していけば、どんどんよくなります。
例えば、以前は毎月旅行に行くほど旅行好きだったのに、膝を痛めて旅行にいけない方がいたとします。

その方にとっては、痛みは膝から来ているのですが、旅行にいけないストレスがそれを悪化させている場合もあります。
痛み自体よりも、その痛みで旅行にいけないということが辛いのであれば、「旅行にいけるようになるよ。」「痛みを通り越して、旅行へ行くことを想像してごら
ん。」と言うだけで、生き生きとしてきます。

どんどん希望が湧いてくるので、その気持ちが身体の動きを良くします。
繁盛するための方法には、チラシを撒くことなどテクニック的なものはたくさんありますが、一番重要なのはこの部分です。

その部分ができていると、自然と口コミが広がり、多くの人が来てくれるようになります。「この先生のところは安心」という、まずはこの点をベースに
考えていただきたいと思います。人間というものは、脳の中で出来事をシミュレーションしているのです。
シミュレーションすることで、イメージし、危険を回避しながら次の行動を起こそうとします。

そのように考えれば、不調者さんと対応したときに一度でも危険を感じるイメージを経験として持ってしまえば、条件反射としてその施術者の顔を見ただけで体を緊張させてしまいます。
回復整体では、相手の過去の経験を考慮して施術を行っていきます。
そのためにはまず相手がなぜここへ来ているのかということを考えなければなりません。

どんどん回復させていくためには、施術者のことを信用してもらい、共感してもらうことが大事です。
相手を思いやるというただそれだけのことですが、脳の中では過去の経験が無意識的に身体への反応に結び付けられているということです。

最後に

様々な視点から話をしました。
回復法で施術をするにあたって、痛みそのものを見るのではなく、
まずは現代の日本人の姿勢がなぜおかしくなってきたのか、その背景と根底を知った

上で広い目でその痛みを考え、その結果根本的に痛みを取るということが大切です。
日々の施術に追われると、これを見失ってしまうことがありますが、この仕事をする

動機づけをしっかりとしていただきたいと思います。
またこれらを理解したうえで、不調者さんに回復法というものを説明して
いただきたいのです。

姿勢指導も含め、これまでに述べたことを理解して日々施術をしていけば、
いろいろなことができるようになります。
まずは素直になり、相手のためを思って、「来てくれてありがとう」という感謝の
気持ちを持ちましょう。感謝するということは、お茶を出したり、何かをあげたり

というサービスを提供することではなく、
「あなたがここへ来てくれたことでいろいろなことが学べました。」という感謝の

気持ちを堂々と出すことです。
相手を思いやっていると、自然に繁盛していきます。
どうか、広い目で痛みや歪みを見る視点を忘れないでください。


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