<基本講座>回復整体の呼吸理論と身体の可動範囲その1

<基本講座>回復整体の呼吸理論と身体の可動範囲

基礎講座第1回「標準アプローチ法で腰痛が改善する理由」と題して、
1.回復整体とはどんな療法なのか
2.回復整体で考える対症療法と原因療法
この2つの理論をまじえて簡単に説明しました。

今回の基礎講座では、

3.呼吸理論
4.身体の可動範囲

この二つの理論について回復整体の立場から説明したいと思います。

第1回のところで脳幹の話をしました。
身体を動かしているのは自分の意識もそうなのですが、簡単に説明すると意識に関係なく自動的に動くという部分があります。
動物本能の脳という部分が反応するという話をしました。
この「反応する」というのは他の動物でも同じです。

人間以外でも、例えば犬でも猫でもそうです。

回復整体ではこの動物の本能的な脳がどうやったら反応するか?ということを活用します。

皆さんの中には高い所が嫌いな方もいらっしゃると思います。
高い所に自分が行ったときに、身体がどんな反応をするか?
例えば、ビルの屋上の柵ない場所に立った時、足がすくんで恐怖を感じます。

その時、身体はどのような反応するのか?
恐怖を感じているのなら身体が硬くなり、冷や汗をかいたり、心臓がどきどきします。

高所から落ちたら怪我をしたり、死んでしまう事もあるわけです。
そうした環境に合わせて無意識の脳が反応して、骨格に影響を与えています。

これが屋上ではなく、平地であればなんの反応も示さない。
でも、脳が高所だと感じると身体が勝手に反応してしまうんです。

面白いことに脳に勘違いさせて本当は平地なのに、高所にいると反応させても同じことが起こるのですね。
バーチャルリアリティの映像で説明します。

体験した戸がある方はわかると思いますが、バーチャルリアリティの映像は本物と見間違えるほどの臨場感があります。

例えばビルからビルに一本の縄の上を歩くシーンを体験させたとします。
このときも本当に高所にいるときと同じように、身体は反応します。

回復整体では「骨格検査」という方法で身体の歪みや関節の不具合などの原因をしらべます。
実際に高所で恐怖を感じたときと、バーチャルリアリティの映像をみて恐怖を感じたときと、骨格は同じように反応して身体が緊張し歪みが生じます。

環境によって身体は反応するということです。
そして、脳に本物ではないというように勘違いさせても同じように身体は反応するという事です。

つまり、人間の脳はイメージだけでもそれがリアルに感じれば身体は勝手に反応してしまうのです。
回復整体では感情を考慮して「脳が描くイメージ」も利用しています。

何らかの危険を感じること、恐怖を与えると動物は身を守ろうとします。
例え後から危険ではなかったと思える情報でも、生命の危機があるかもしれないと判断するからです。
顔をめがけて硬いボールが飛んできた!と瞬時に反応して避けたが、よく見たら発泡スチロールの危険のないボールだった。
こんな場合でも身体は過剰に反応します。意識で考えることなどしません。
考えていて、もし本物のかたいボールだったら怪我をしてしまうからです。

お風呂に入る際、ぬるいと思って手を入れたら熱かったのですぐ手を引っ込めた。
目の前に虫が飛んできたので、無意識に目を閉じた。

こうした反応は考えて行っていることではありません。
条件反射といいます。

少しこのことも説明しておきます。

熱いお風呂に手を入れて無意識に手を引っ込める反応のことを条件反射といいます。
詳しくいうと脊髄が関与しての反応を条件反射といいます。

先に説明したように身体の生命の危険に関して、その都度考えていたら命がいくらあっても足りません。
なので熱いという情報が瞬時に脊髄で判断して「手をひっこめろ」と命令が返ってきます。
誰でも必ず反応するシステムです。犬や猫などの動物でも同じです。

そうではなく、何らかの条件(刺激の条件)を学習と絡めて与えられた反応を無条件反射といいます。

有名なのは「パブロフの犬」です。
「犬に餌を与えるときベルを鳴らすという学習をさせると、ベルを鳴らしただけで涎をたらすようになる。」
ということです。

人間も同じで学習することで脳が判断して何らかの反応を示すことを条件反射と言います。
これは学習した人間は反応を起こしますが、とそうでない人間では全く同じ情報(刺激)を与えても反射を起こしません。

例えば人間の食べ物の好みの問題があります。
好きな食べ物、嫌いな食べ物という学習をしているということです。

好きな食べ物は思い浮かべただけで身体が反応します。
犬のように、よだれを流す方もいるでしょう。
逆に嫌いな食べ物は思い浮かべるだけで吐き気がする方もいるでしょう。

このとき、やはり骨格は安心して骨格を緩めたり、恐怖を感じて硬くなったりするわけです。

回復整体では上記の「条件反射」と「無条件反射」の両方の反射を活用して身体の不具合を解消させていきます。

「パブロフの犬」的な学習効果は、その反応が健康に悪い影響を与えることがあります。

長年恐怖を感じて生活すれば健康を害します。
ストレスで病気に・・・
とよく言われますがマイナス思考が骨格に与える影響は凄く大きいのです。

人間の生活すべてについて、あらゆることが学習されてその反応が身体にあらわれます。

しかしその逆もあるわけです。
身体反応がプラスに働くように脳を勘違いさせることも可能という事です。

脳を学習効果により良い方向に勘違いさせれば、緊張した身体が安心します。
それが痛みや不具合としてあらわれていれば、良い学習効果によって防衛反応を解き消失していきます。

このこと(「パブロフの犬」的な学習効果)は条件反射の自律神経系の反応としての刺激とあわせて回復整体では行っていきます。

先ずは、自律神経系の反応と回復整体についてお話しします。

これは人間だけではなく、動物も同じということです。

犬や猫もそうです。
犬や猫はわかりやすいです。
私も犬を飼っていますし、子供の頃猫を飼っていたこともあります。

犬は恐怖を感じ相手を敵だと思えば、身構えて牙をむき身体を硬直させます。
猫だったら毛を逆立て逃げるか戦うかという姿勢をとります。

「この人(動物)」は安心できる(敵ではない)と思えばすぐに受け入れ防衛反応をやめます。

人間も同じです。

外界の刺激に対して安心だと思えばそれを受け入れるわけです。

逆に過剰な刺激、例えば痛みを伴う刺激、不意の衝撃などに対応して骨格が勝手に緊張して対応しますね?

例をあげると、交通事故の際、前から自動車が不意に来て「あ、ぶつかる」と思えば、意識して身構えたりしません。
無意識の脳が反応します。

考えている余裕などない時、考えていたら怪我をしてしまう、死んでしまうかもしれない、即座に身構えないと身体を守れないというとき、勝手に脳が信号を送って身体が緊張するわけです。

危険が迫っていることに全く気が付かないで身体を身構えない状態より、自動的に身体を守ってくれるおかげで怪我が軽く済むかもしれない。
交通事故などはそのほうが以外と軽いわけです。

ですから隣に乗っている人のほうが重傷ということがありますでしょう?

無防備でいると重傷になる可能性が高いのです。
身構えていると、それは意外と軽傷ということがあります。
このようなことは何が作用しているのかというと、自律神経系が作用するわけです。

動物もすべて同じ仕組みで作用します。

余談ですが「交通事故の後遺症」には実際の身体の不具合と、トラウマ的に心の問題として身体に症状が発生している場合があります。
この場合には先に説明した「無条件反射」を活用して、身体に安心できる情報を繰り返し与えることで学習させ、交通事故を思い浮かべても身体が反応しないように仕向けることも可能です。

今回の基礎講座はそのような刺激(条件反射における自律神経系の反応)についての説明です。
自律神経系の反応を活用した回復整体は、刺激を相手の脳に送り意図した反応を引き出すという点において自律神経系が関与している「呼吸」について重要視しています。

呼吸は自律神経が関与して働く機能ですが、唯一意識的に作用させることができる機能です。
どいういうことかというと、心臓も自律神経が働くことで自動的に働いています。なので寝ている時でも動いているわけです。
当たり前ですが、意識して心臓を一瞬でも止めることはできません。

同じように呼吸も寝ている時でも勝手に行われています。
でも、心臓と違って呼吸は意識して一時的に止めることもできるし、ゆっくり吐いてゆっくり吸ってうというようなことも可能です。

そのような点では、無意識の呼吸と意識してコントロールできる呼吸と二つの作用を持っているわけです。
この呼吸を使い分けて骨格、筋肉、皮膚等に刺激を与え、無意識の脳に情報を送ります。(無条件反射を利用するときは意識した繰り返しの学習)

息を吐くときには副交感神経が作用するようになっています。

息を吸う時には交感神経が作用するようになっています。

つまり自律神経には2つあり、1つは交感神経、もう1つは副交感神経。

これによって私たちの基本的な生命活動は自動的に保たれているのです。

この仕組みは筋肉や神経にも表われてきます。
例えば筋肉の働きで考えると、息を吐くときに筋肉は弛緩します。緩むわけです。

そして息を吸ったときには緊張するようになっています。

ちなみに回復整体で「吸う」ということ、吸って技法をかけるときには、「吸気」と言います。
そして吐くときには「呼気」と言います。

「呼気で筋肉は弛緩する」、「吸気で筋肉は緊張する」という事です。息を吸う時硬くなり、息を吐く時に緩む。

または筋肉は息を吐く時伸びて、息を吸う時縮むようになっています。

緊張するときと弛緩して縮んでいる時では状態が違います。
弛緩している時と伸びている時では状態が違います。

しかし、これらは呼吸を使って技法を行う際には同じ条件で行います。

一気に難しくなりましたので、分かりやすく説明します。

床に伏した状態での背筋運動を例にします。

背中を反らせる動作をするときどうでしょうか?
自然に息を吸う動作となると思います。

これは人間が持っている自然な動作です。
息を吸う時、大きく分けては背中側の筋肉は緊張した状態になります。(筋肉に力が入っている状態)
身体全面(お腹側)の筋肉は伸びた状態になります。(筋肉に力が入っていない状態)

この作用で背筋運動身体を反らすことができるわけです。
すなわち、息を吸う時背中側の筋肉が縮んで(力が入って縮む)前面の筋肉が伸び(力が入らず伸びる)ます。

この逆で身体を曲げる動作、いわゆる腹筋運動はどうでしょうか?

お腹を凹まして自然に息を吐う動作になると思います。
息を吐く時、お腹側の筋肉が縮ん(力が入って)で背中側の筋肉が伸び(力が入らず)ます。

では、この逆をやってみたらどんな作用が起こるでしょうか?
息を吐きながら背筋運動をしたり、吸いながら腹筋運動をやってみてください。

どちらの運動もやりにくいか、できないのではないでしょうか?

このような動作は自然に呼吸が作用して動きやすいようになっています。

筋トレで行う腹筋運動や背筋運動だけではありません。

バンザイの動作をするとき背中を反らせます。この時は背中側の筋肉が縮んで(力が入らず)お腹側の筋肉が伸びる(力が入って)ことで自然に動きやすい動作になります。

腹筋運動、背筋運動の時と姿勢は似ていますがお腹側、背中側で筋肉の作用が違ってきます。

しかし、お辞儀をするときは息を吐かないとできません。お腹に空気が入っていると邪魔になります。

深呼吸する時は、息を吸ったときのほうが上がりやすくなります。
このように呼吸と筋肉の状態というのは関連性があるのです。

人間に限らず動物は優しい刺激を与えると、身体が「受け入れますよ」といって筋肉は緩むんです。
その逆に「この部分が緩みすぎている」という場合には緊張を受け入れるような刺激を与えてあげるのです。

それをうまく使って技法をかけていきます。

実際の回復整体の技法は重力に応じて骨格を支える筋肉の状態が変化しまので、筋肉が緊張しているか(力が入っている)弛緩しているか(力が入っていない)、あるいは縮んでいるか(力が入っている)伸びているか(力が入っていない)の状態で呼吸のうち「呼気」か「吸気」をあてはめて刺激を与えていきます。

簡単に説明しても、少しややこしいですがこれが回復整体の呼吸理論となります。

呼吸という絶対に変えることのできない普遍の原理を全て使います。

なのでどのような技法を行うにしても、再現性があるわけです。言葉変えれば「まぐれ」がありません。

再現性があるという事は、誰がおこなっても同じ反応が起きるという事になります。
先の筋肉の特性で考えると、この部位の筋肉が緊張しているから弛緩させたいとします。
対応した技法をかける際、例えばその筋肉を引っぱって元の状態に戻したいとすれば、安心できる刺激で呼吸を使って作用させれば緩むわけです。

この呼吸の作用を考えずに適当に筋肉を刺激すれば、益々原因のある筋肉が緊張したり、関節の動きが悪くなってしまう事もあるわけです。
何回かやっている内に「まぐれ」で成功するときもあるかもしれませんが、それでは再現性があるとは言えないのです。
誰がやっても、同じ結果が出ないとだめなのです。

 

 

つづく。

 


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