回復整体基礎理論④(呼吸運動理論)

(呼吸運動理論)

前の記事「回復整体基礎理論③(身体と脳(心)の関係)」


回復法は呼吸を利用して行う

 

呼吸運動理論

脳の働きについて

 

脳の最大の働きとは、生命活動を維持することである。
経験による物事の記憶や、判断したり、感じたりというような、働きも重要だが、意識せずに行われている、様々な活動は脳の働きによる。

呼吸したり、体温を一定に保ったり、心臓が常に活動しているのも脳が意識とは別に指令を送っているからである。
内臓諸器官や神経活動についての指令をつかさどり、身体が生命の維持に欠かせない働きをしている。

生命に危険が発生した場合に直ぐに対応できるように常に活動している。
例えば、あとから危険でないと判明しても、何か不明な物体が飛んでくれば、反射的にその物体からよけようと、全身の筋肉が緊張し、瞬時にその物体をよけるように活動を起こす。

考えてから、物体をよけようとしても、怪我をしてしまうため、脳は自動的にこれらの伝達を意識の判断を待たず行うように指令を出すのだ。

 

人間の日常的反応行動はすべて習熟した運動である

随意運動とは、自分の意思で行う運動 

 

人間の生命活動を成立させている意識的行動は、身体の最高中枢である脳から全てが発令される指令をから、身体各所の骨格筋がその指令を受けて運動することで実際の身体の動作が行われる。
それが日常的反応として身体の運動となっている。

身体を動かしている本人の意識や意欲によって意識的に行われる肉体運動が随意運動である。
人間の身体動作は、繰り返しの動作によって学習される。

その身体的な機能を上達させるしくみになっている。
日常的反応行動とは、人間が生まれてから、死ぬまでに長期年月をかけて身につけ、高度に習熟した随意運動なのである。

人間の意識的行為は、あらゆる動作において脳に通知され、脳は身体各所を動作させるために、骨格筋が活動するように身体各所に指示を送る。
意識的に自らの意欲や意志によって行われる身体的動作を随意運動という。

身体運動は脳のコントロールによって行われる

日常生活での身体動作は、不規則で何が起こるかわからない。
脳はその環境の中で様々な指令を身体各所に指令を出している。

例えば、スポーツや楽器の演奏、自動車の運転等、様々な身体運動や、習熟した匠の技などは繰り返しの身体動作において脳が記憶した結果である。
更に、やる気や意志により、自らの肉体をどのように計画的に移動させ、その動作を成り立たせれば良いか、意志からの指令により、脳はその計画に沿った骨格筋への必要な収縮命令を出している。

全ての身体的動作は脳が指令を発し、身体各所でその動作が行われている。
手足はもちろん、意識的に行うほとんどの運動が、随意運動である。

随意運動と不随意運動の両方を行える「呼吸運動」

*随意運動、不随意運動、呼吸

随意運動とは逆に、意識とは無関係に行われる運動を不随意運動という。
不随意運動とは、無意識のうちに行う運動である。

心臓の運動、消化器官の運動が該当する。
回復法は、人間の身体の活動の中で、随意運動と不随意運動の両方を利用して行う療法である。

これら二つの運動の中で、唯一両方を行うことができる唯一の行為とは、「呼吸」である随意運動、不随意運動および、その両方を行うことができる呼吸運動とを適切に組み合わせて意図的に行うことで様々な骨格上の不具合を改善することが可能である。

回復整体では呼吸運動理論を利用し筋の緊張を解消する

例:無意識の筋肉緊張のメカニズム(肩こり、眼精疲労等、特定の筋疲労)
コリのメカニズムとは?

意識的に行う同じ姿勢(随意運動)を繰り返し行うことでその姿勢を脳が学習してしまう。
肩(僧帽筋)を収縮させる動作を繰り返すと骨格筋はその姿勢をイメージしただけで緊張する。

同様に、同じ姿勢や動作を長時間行ったり、繰り返すことで無意識の脳(小脳)が勝手にその動作を形状記憶合金のごとく一定の条件が満たされると勝手にその姿勢を維持してしまう。(腰痛、関節痛、股関節痛・・・)→→→意識的(人為的)に呼吸を利用して筋の緊張を解く方法とは?

脳幹にある呼吸中枢(延髄)

筋肉の緊張や弛緩を操作する

呼吸運動は随意運動(意識的)
脳幹にある呼吸中枢(延髄)では意識に自動的に管理。

深呼吸の操作→意識(随意運動)。睡眠中の呼吸→無意識(不随意運動)。
呼吸運動が行われると、身体各所の筋肉の緊張や弛緩という生理現象が発生する。

外部的刺激を通して意識と無意識に効果的に身体に働きかる。
外部的な刺激を加えた時、生理現象として必然的な身体反応が予測できるか。

外部の刺激に対し、100%予測できる反応があることが前提。
同じ条件の刺激が身体反応に100%発生すること。(人間であれば100%の反応が得られる)

自律神経の無意識下における刺激による反応を利用する。(身体への負担が少ない)

脳幹の働き

意識の制御

大脳の活動を制御する(視床下部による睡眠の調整)
生命維持の機能(呼吸・血液循環・体温調節など、基本的な生命の活動を行っている)

回復整体法では、呼吸運動を利用し、筋肉を介して脳幹に情報を送る。

呼吸を利用して意識的に筋の状態をコントロールする

呼吸運動が行われるとき、身体における筋肉の緊張や弛緩という生理現象がどのような外部的刺激を通して効果的に身体に働きかけができるのか。
回復整体基礎理論④(呼吸運動理論)

筋がバランスよく姿勢を保っている状態。
背中を丸めて座る場合。(筋が伸ばされながら力を出している遠心性収縮)
上体を反らし、筋に筋地用を入れた状態(筋が短くなりながら力を発揮する求心性収縮)

呼気、吸気でそれぞれで筋の収縮は行われているだろうか?

反射を利用する

反射の種類

骨格筋には、繊維と平行しに紡錘形をしたセンサーが平行している。
内側には錘内筋という筋繊維があり、そこに神経繊維が巻きついている。

この神経線維をGia繊維といい、筋肉の長さを感知して信号を脊髄に送る役目を持つ。
外界からの刺激により、筋肉が牽引され、錘内筋が伸びると、Gia繊維は直ぐに脊髄に情報を伝達し、神経細胞に信号が伝わる。

これらの一連のプロセスにより、牽引された筋肉が瞬時に収縮する。
伸長反射とは、伸ばされた筋の長さを一定にしておくための反応。

同じ姿勢を保持しているのは、微妙な伸長反応があるからである。
それぞれの関連する筋肉は、微妙に緊張することで、一定の姿勢を維持している。

人間が無意識に立位の姿勢を保持できるのもこの働きのおかげ。

筋の働き(収縮)

人間のあらゆる動作は、筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで成り立っている。
例をあげると、腕を曲げると“力こぶ”が出来る。

“力こぶ”は上腕二頭筋が収縮することで出来る。
反対に、上腕二頭筋に拮抗する筋肉は弛緩し伸ばされることになる。

反対側の筋肉とは上腕三等筋である。
このような動作をする筋肉を骨格筋と呼ぶ。

骨格筋は自らの意志により動作することが出来る筋肉であり、この筋肉を随意筋と呼ぶ。
この他に、心臓を動かしている筋肉を心筋、胃等の臓器も筋肉であるが、平滑筋であり、自ら意志ではなく、自律神経の調節をうける不随意筋と呼ぶ。

骨格筋

骨格筋は人間の体重の約50%を占めている。
骨格筋は骨と共同して、活動のための姿勢を形成し、あらゆる動作に対応する。

人間の動作は、生活様式により多彩である。
とくに、指先は繊細な動作が可能であり、骨格筋もそれに伴い細かな動作に対応して出来ている。

文字を書いたり、米粒ほどの部品を組み合わせて製品にしたりと、他の動物では不可能な細かな動きにも対応している。
また、スポーツなど、全身を連動させた動作にも対応している。

例えば、野球でボールを遠投する、サッカーでボールを蹴る、といった、道具を活用して骨格筋を連動させる大きな動作まで多用に対応している。
回復整体を学ぶ際には、これらの骨格筋の動作を、自らの身体を通して、どの筋肉がどのような動作に対応し、互いに連動して身体を動かしているのか感じてみる必要がある。

骨格筋の動きにあわせて、実際にその筋肉に触れてみるなど、それぞれの関節の動きを確かめ、感じ取る必要がある。
自らの骨格筋の動きが理解できることが、他人の身体を理解する第一歩である。

筋収縮の仕組み

筋の収縮の様態について、特に重要な「求心性収縮」、「遠心性収縮」、「静止性収縮」の3つについて解説する。

①求心性収縮
求心性収縮は、筋が負荷に対して張力を起こさせ、筋の長さが短くなって収縮する事である。

この際、骨格は梃子となる。
例えばダンベルを持って前腕を曲げる際の関節は肘であり、肘を屈曲することで支点として作用する。その際、上腕二頭筋が求心性収縮を起こす。
石と前腕に負荷がかかり、その部位に加わる重力であるといえる。

②遠心性収縮
遠心性収縮は筋張力よりも大きい負荷である際、筋は収縮しても伸ばすことが出来る。
それは最も大きな張力においてだけではなく、様々な張力の段階で起こる。

持ち上げた石を元に戻す際には、肘は緩やかに伸びる。
外から加わる負荷が筋の張力と比べて強いとき、またはその運動をコントロールする際にみられる。

同様の仕事量であっても、求心性収縮よりも消費するエネルギーが少なくなる。

③静止性収縮
静止性収縮は筋の全長が収縮しても変化しないことをいう。
同じ張力があっても、静止姿勢を負荷に対して保持できない場合などに発生する。

関節の角度、筋の長さについては変わらない。
筋の出力については、その負荷に対して等しくなる。

身体を反らせる動作は吸気で可動範囲が広がる

身体を反らせる動作の際、吸気(息を吸う)の動作で腹膣内が広がらなければ呼吸が出来ない。
その為には呼吸をした際、肺の中に目一杯の空気が入る必要がある。
これは物理的法則であり、呼気ではこのような動作は自然ではない。
呼気の動作で身体を反らせることは不自然であり、意識的にわざと行わなければ出来ない動作である。
上肢を挙上し、下肢を後方に反らせる動作は自然であり、現象復元の法則に当てはまる。
この場合、呼気で筋肉が弛緩すると言う説明とは別の問題となる。
人間でも、動物でも、それぞれの身体において自然法則にしたがって活動しているのである。

身体を曲げる動作は、呼気で可動範囲が広がる

身体を曲げる動作の際、呼気(息を吐く)の動作で腹膣内が収縮しなければ呼吸が出来ない。
その為には息を吐いた際、肺の中に目一杯の空気が入っていては身体を曲げる動作は出来にくくなる。
これは物理的法則であり、吸気ではこのような動作は自然ではない。
吸気の動作で身体を曲げることは不自然であり、意識的にわざと行わなければ出来ない動作である。

自律神経について考える

呼吸も同様

呼吸運動も自律神経が働いている。
吸気→交感神経。呼気→副交感神経。

神経系による調節システムで、最もダイナミックに作用しているのが自律神経である。
ホメオスタシスの維持に重要な役割を果たす。

自律神経は脳や脊髄から出て、内臓や血管、腺など自分の意志とは、 無関係にはたらく器官に分布し、消化、吸収、循環、代謝などの無意識的な調節、反射をつかさどっている。
意志の影響を受ける事が少なく、自動的にはたらく神経の系統であるため、自律神経と呼ばれる。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つの系統からなるが、この2つは拮抗的にはたらく。(拮抗性支配)

交感神経と副交感神経は、両方の神経が同時に強く興奮する事はなく、一方が強いときは他方が弱められるというように、バランスをとってはたらく。
臓器の多くは交感神経と副交感神経の二重支配を受けているが、抹消血管以外の大部分の血管、汗腺、立毛筋は交感神経の支配のみ受けている 。

自律神経(交感神経)

闘争、狩猟、突発的な事故に対するときになど、短い時間に全身的な機能を活性化する神経
エネルギーを外の活動に振り分け、発散する(異化作用)場合にはたらく
・瞳孔→拡大  ・呼吸→激しくする →骨格筋が緊張 ・ホルモン分泌→促進  ・精神活動→促進・活発

自律神経(副交感神経)

交感神経の同時に広い範囲に作用することはない。
副交感神経は、消耗した体力の回復をはかり、エネルギーを充電する(同化作用)場合にはたらく。

意識のうえでは身体を休めているという感覚のときに作用している神経であるが、身体自体は同化作用のためにはたらいている。
消化管の蠕動運動は促進され、肝臓ではグリコーゲンの合成がおこっている。

・瞳孔→縮小
・呼吸→おだやかになる→骨格筋が弛緩する
・ホルモン分泌→抑制
・精神活動→急速

回復整体法の施術で意識する呼吸

自律神経を自らの意思で唯一コントロールすることができるのが”呼吸”という自然法則である。
人間の生理現象を利用して各種回復法の技を必要に応じて使っていくことがもっとも大切なこととなる。

息を吸う場合(吸気)→交感神経が関与する。(筋肉が緊張する)
息を吐く場合(呼気)→副交感神経が関与する。(筋肉が弛緩する)

筋の緊張が原因で不具合が出ている→呼気で刺激を骨格筋に与える→脳が刺激に反応→筋の緊張を解消→元の骨格を維持

筋肉と神経は呼気で牽引法を行うと弛緩する

骨格上の筋肉は緊張して、自らは牽引する機能しかない。
筋肉の組織自体の構造上、非常に柔軟に対応できるようになっている。

筋肉それ自体に自らを引き伸ばす機能はない。
同時に筋肉自体が自ら機能して弛緩することが出来ないことを意味している。

しかし、現実には緊張した筋肉も正常な身体であれば弛緩し正常な状態に戻ることが出来る。
これは、筋肉自体に自らが弛緩する機能がない代わりにこれに対応する機能として拮抗筋が存在している。

例えば、腕を曲げ伸ばしするための動作を考えてみると。腕を曲げる動作を行うときは腕の内側の筋肉が関与し、緊張することで腕を曲げることが可能になる。
この時同時に外側の筋肉は内側の筋肉が緊張することにより、牽引が掛かり弛緩することが可能になる。

この逆に、腕を伸ばす動作の際、外側の筋肉が緊張することにより内側の筋肉が牽引され、弛緩することが可能になる。

筋肉の牽引による生理的な条件反射の利用

これらの拮抗する働きを行う筋肉を拮抗筋という。
仮に拮抗筋の動作が同時に行われたときにはこの場合、腕が動かなくなる。

拮抗筋が同時に緊張するようなことがあれば、身体は動作が出来なくなるであろう。
拮抗筋の働きとは、一方の筋肉が緊張している場合、その反対側の筋肉は牽引され弛緩している状態となる。

このように拮抗筋は牽引が掛かると弛緩している状態になるのである。
よって、筋肉それ自体に自らを引き伸ばす機能がなくとも拮抗する筋肉の働きにより牽引が掛かり弛緩することが可能となる。

これらを現象復元の法則を応用した回復法では施術に応用し、様々な症状を回復することが可能となる。
このことと自律神経の働きを同時に考慮に入れ施術することにより、身体の生理現象である条件反射の働きを確実なものとして呼吸法を取り入れているのである。

筋肉は呼気で牽引すると可動域が失われる

このことは先に述べたことの全く逆となる。
この時は、緊張している場合の筋肉ばかりが原因ではなく逆に異常に弛緩し、痛み等の症状が出ているときもある。

そのときは身体上の広がりすぎた可動範囲を狭くする必要がある。
この場合もこの法則を利用し正常な身体の可動を取り戻すことが可能となる。

呼吸を利用し自然な動きを助けることが大切

人間が普段何気なく行っている動作に対して、呼吸というものが大きくかかわってくる。
呼吸は自然な動作を助けているとも言える。

これらは自然の法則であり、施術の際に絶対に無視出来ない。
身体の動きに対して無理のない、自然な動きとは何なのか?

腕が挙がらない不調者には、息を吸う(吸気)ときにその動きをほんの少し助けてあげれば、挙げやすくなる。
それを助けると身体の可動範囲が広がる。

このような普段自然に行っている動作を呼吸を利用して可動範囲を狭めたり広げたりができる。
四十肩や五十肩で腕が上がりにくいという症状についても、息を吸うときに安全安心な刺激を加えることにより、腕が上がり易くなる。

呼吸法を間違い、自然な動作の邪魔をすると身体に余計な緊張を与え、筋肉は不自然な緊張する。
逆に、呼吸法を正しく理解し適切な使い方をすれば、身体は安心し、筋肉が緩む。

呼吸以外にも不快な臭い、不快な音、不快な光景に対しては、身体を緊張させる。
その逆で心地よい香り、気分の良い音楽、すばらしい風景に対しては、身体はリラックスして弛緩する。

ある刺激に対して、筋肉は緩んだり緊張したりする、この現象を回復法は最大限活用しているのである。
施術の際に注意しなければいけないことが上記のことである。

施術所において、違和感のある雰囲気、不快なにおい、また施術者が不調者に恐怖を与えるような行動や言動は特に気をつけなければならない。
身体に不具合のある敏感な不調者は、それだけで症状や痛みが増大する危険がある。

このことは回復法の実践者としてその理論から第一に気を配ることである。

その他の自律神経の働き

交感神経の働き 副交感神経の働き
心臓 拍動が速くなる 拍動が遅くなる
血管 収縮 拡張
血圧 上昇 下降
大腸・膀胱 収縮 弛緩
性器 弛緩 拡張
皮膚 収縮 弛緩
瞳孔 拡大 縮小
胃・腸   ぜん動運動抑制(便秘) ぜん動運動亢進(下痢)
睡眠 眠れない 眠る
呼吸 速くなる 遅くなる
骨格筋等 緊張 弛緩
肝臓 コラーゲン分泌 グリコーゲン合成
副腎 アドレナリンを分泌
膵臓 膵液分泌制御 膵液分泌促進
結腸 運動制御 運動促進

 

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